頼むから今回ばかりは気づいて欲しかった。












「あーっちぃー!」

ちりちりと太陽の光が痛い砂漠のド真ん中。
障害物も無いので迷いそうにもない場所。
けれど見事に国の主要人物大多数な一行は情けなくも迷っていた。

「暑いというか・・・なんというか・・・。」
「・・・もう限界ですわ・・・。」
「おやおや情けないですね、皆さん。」
歩き初めてからかれこれ1時間。
旅をしているときにはそれほど苦痛にも感じられない長さだろう。
しかし、如何せん場所が悪い。
「しっかし、相変わらず涼しげな顔だなジェイドの旦那は。」
「・・・やっぱりその服はマルクト軍の・・・?」
「違います。その話はもう結構ですよ。」
即答するジェイドの顔が一瞬引き攣って見えた。
どうやらザレッホ火山での出来事は忘れていないらしい。
だが、またすぐに笑顔になると、なにやら意味有り気にルークを見る。

「なぁ〜ジェイド〜。なんか涼しくなる方法ってねぇの?」
「ふむ・・・そんなに暑いならいっそその上着を脱いでしまったら如何ですか。少しは涼しくなると思いますよ。」
「?・・・砂漠の時は肌を・・・おわっ!?」
当然のようにルークに出された提案にガイは敏感に反応した。
すると丁度良くジェイドの傍に立っていたガイの腹には肘鉄がヒットする。
本来、砂漠などでは肌を隠すべきであるはずだ。
それをジェイドが知らないはずがない。

だとしたら。

そんなことを考える余裕も無くガイは痛みに悶える。
「あぁ、そっか。こんなあっちぃ時になんで俺、こんな邪魔な服着てんだろ?」
「それはこちらの知りたいところです。」

ちょっと待てルーク!お前騙されてる!どう考えたって他の奴らのほうが暑そうな服着てるのに!頼む!気づいてくれっ!

ガイは必死だった。
何とかしてこの変態鬼畜眼鏡の魔の手からルークを守らんとして。
けれどそんな姿がルークの視界に入るはずもなく。

気づけばルークが上着を脱ぐ姿がスローモーションで見えて・・・。

「んー。あんま変わんねぇ。」
「まぁ、この暑さですからね。でも、上着を着ているよりは幾分マシだと思います。」
「だよなっ!じゃ、しばらくこのままで居るわ。ありがとな、ジェイド。」
「いえいえ。お役に立てて嬉しいですよ。」

だからッ!ジェイドがそんな風に素直に礼を受けとるときは絶対裏があるんだって!

痛みも収まる頃には時既に遅く。
すぐそこには笑顔で立ち去るルークの後ろ姿。
そして、己の目の前にはいつも以上に爽やかな笑みを浮かべたジェイド。

「ガイ。どうしたんですか。顔が赤いですよ?」
不意にガイに向けられた笑顔。
ジェイトの言った言葉が理解できずに思わず顔に手を当てる。
するとそれはいつの間にか異常に熱くなっていて。
「・・・お、おお、俺は何も見てないぞ!?」
「おや・・・何も、とはなんのことですか?」
しまった!と思うと同時にまたガイの体温は上昇して行く。
それに比例してジェイドの笑みは深まるばかりなのだが。
「案外、ガイも初々しいですねぇ。」
「何がだっ!!」
ジェイドはまたルークの後ろ姿を眺める。
それにつられてガイも同じくして眺めてみるのだが。
み、見えないッ!俺には何も見えないからな・・!!
心の奥で叫ぶしかなかった。
これ以上この鬼畜眼鏡にからかわれてたまるか。
それがせめてもの抵抗だった。

「貴方、ルークの露出した腰を見て何を想像しているんでしょうねぇ。」

ボソリ、と耳元で囁かれた声。
反応しなければいいものを、勝手に体は跳ね上がる。
「――――っー!!」
否定の声を出せずにいると、静かにジェイドはガイの傍を離れていった。
しかし、最後に向けられたあの目は面白いものを見つけたと言わんばかりに輝いていて。

「・・・ぜ、絶対あの変態にルークは渡さないぞ!・・・うう・・・。」




新たな決意は乾いた風に溶けて消えた。




END






「砂漠に嘆く者の決意」
今度はガイVSジェイドでルーク争奪戦?
でももしかしたら大佐さんは両方狙ってるかもしれない(笑
ガイは相変わらず苦労人。


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