―――――どうすればいい。












「・・・俺なんて、生まれてこなければよかったんだ・・・!!」




バチン、と景気のいい音がして俺は目が覚めた。
何事かと思えば段々意識がはっきりとしてきて。
何故か、ひりひりと両頬が痛むのがわかった。
「・・・ガイ?」
まだ薄暗い中、目の前を確認してみればそこにはガイの姿。
同室なのだから居るのは当然だ。
しかし、何故俺の前に立っている?
何故、俺の両頬が痛む?
声を掛けても返事はない。
ただ、ガイはそこに立ち尽くすだけ。
薄暗くて、顔も見えない。
「えーと・・・。お前、今俺の頬叩いた?」
「ああ。」
やっと返ってきた返事は些か不機嫌さを含んでいた。
普段穏やかなガイからはあまり想像ができない。
「なんで?」
尤もな質問を投げかけるとまた沈黙が広がる。
ガイは理由無しに突然人を殴るような奴じゃない。
そんなの俺が一番よく知ってる。
だから余計にわからない。

なんで突然俺の頬を叩いたりしたのか。
なんで不機嫌なのか。

こればかりはガイが答えてくれなければ俺には解釈のしようもないのだ。
沈黙が痛い。

なぁ、ガイ。答えてくれよ。

そんな思いでただ待ち続ける。
なんとなく寂しいのはきっと薄暗いせいかもしれない。
だけど、ここまで何も言ってくれないガイは初めて見た。

怖くて、寂しい。

ただ、待ち続けるしかできなくて。
お前の言葉が欲しくて堪らない。

「・・・なんとか言ってくれよ、ガイ。」
堪えきれずにもう一度聞く。
頼むから、お前の声を聞かせて。
「俺・・・何かしたか?」

寂しい。

「・・・覚えてないんだな。」
「え?」
なんのことだかわからない。
覚えてる、って何をだよ。
「悪いな。起こしちまって。」
「だから、なんで―――」
「なんでもないんだ。・・・なんでも。」
俺の声を遮って言うガイが苦しそうだった。
お前がなんでもないっていうときには絶対なにか悩んでるんだ。
それを俺が知らないとでも思ってるのか?
「・・・俺、お前のことならなんでも知ってる。」
「ルーク?」
「なのに・・・今のお前は全然わかんねぇ。なんなんだよ!俺に隠し事とかすんな・・!」
俺はお前のことを全て知っていたいのに。
だからこんな風に理不尽なのは、嫌だ。
たとえお前が俺のことで悩んでようとも。
寧ろ、俺なんかのことで悩んで欲しくないんだ。
「・・・ごめんな。でも、本当になんでもないんだ。」
「ッ!俺はそんな言葉が聞きたいんじゃない!」
「ごめん。」
謝罪の言葉なんて要らないのに。
謝るのは、俺のほうなのに。

ガイはいつだって、俺のことは全て知ってるんだ。
でも俺は、ガイのこと知らない。

知ってるのは、ガイが俺に隠してることが多すぎるって事実だけ。
そして、俺のために悩んでることが殆どだってことも。

ガイに辛い思いをさせるくらいなら。
「・・・俺なんて・・・。」

呟いた声が聞えたのかはわからない。
けれど、お前はもう一度言った。














「ごめん。」














―――――お前を悪夢から救う方法が俺にはわからないんだ。





END






「謝罪に隠す者の苦悩」
ガイルクガイ。
一番最初の台詞はルークの寝言だと思います。(・・・
それをガイが聞いて怒ったとかなんとか。解説しないとわからないとか虚し過ぎるOTL


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