違う、けれど同じなんだ。












目の前に穏やかで温かそうな紅が見えた。
長く外に居たせいで感覚のなくなった手でドアを開く。
ルークはその音に気づいてゆっくりとこちらを向いた。
なんだろう。
よく、わからない違和感が俺を包む。
今そこにいるのはルークだ。
それは間違えようのない事実で。

「ガイ。どうしたんだ?顔色悪いな。」
心配そうに俺を覗き込むマリンブルー。
それは紅に際立つ色ではなく、寧ろ溶け込むような。
「・・・いや、ちょっと外に出てきたから体が冷えてるだけさ。なんでもない。」
俺がドアの前に立ち尽くしたままでいるとルークは顔を顰めて近づいてきた。

これは、近づけば離れていく紅じゃない。

「なんでもないならそんなとこに突っ立ってないで、座れよ。」
そう言ってルークは強引に俺の手を取る。
すると余計に眉間の皺は深くなって、今度は睨むようにして見上げてきた。
「お前、どれだけ長く外にいたんだ?」
「どれだけって・・・覚えてないな。」
馬鹿じゃねーの、という小さな呟きが耳に届く。
それには苦笑を漏らすしかなかったが、心配してくれる気持ちは素直に嬉しい。
ルークは一度握った手を離す。
そして今度はむくれた顔を隠すように抱きついてきて。
「・・・アッシュが、いたんだ。」
「ん?」
穏やかで温かい紅の感覚が心地よい。
俺を抱きしめている手の力がほんの少し強まったのは気のせいだろうか。

「窓、眺めてたら広場にあいつが見えてさ。」
「うん。」
あぁ、見えてたのか。
漠然とそう思ったが返す言葉は見つからない。
「・・・とられるかと思ったんだ。」
「何が?」
「・・・。」
今日は、ことごとく俺の問いが水になる日だ。
アッシュといい、ルークといい。
頼むからちゃんと主語をつけて話をして欲しいと思うのは間違いなのか?
「そういえば、アッシュが。」
「・・・?」
さっき何か言っていた気がする。
確か、ルークに伝えてくれ、と。
俺には意味がわからなかったが、きっとルークならわかるのだろう。
「『渡さない』って、お前に伝えろってさ。」
「・・・。」
聞いた途端、ルークは更に複雑そうな顔をする。
俺をただ睨みつけて、何か言いたそうだ。
そしてしばらく続いた沈黙の後。
「気づけ、馬鹿!!」
突然大声を出してルークは部屋から出て行った。
その行動に俺は呆気にとられるばかりで。
部屋の外からは、遠ざかっていく乱暴な足音。

「っ、俺だって渡さねぇからな!!」

遠くに聞えた台詞の意味に俺は頭を悩ませるばかりだった。








結局、先刻の違和感はなんだったのだろう。





END






「同調を疑う者の困惑」
「白銀に佇む者の心境」の続き。
ルクガイ。でもやっぱりアシュ→ガイ←ルク。
いっそ百合でいいと思います彼らは(ヲイ



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