わけのわからない感覚が広がって、消えた。












うそだろ、なんて言葉は転がり落ちる前に霧消する。
声を出す前に、流れてくる力に満たされたから。

これは、あいつの。

思った瞬間に体は軽くなった。
一気に強さが倍にも増した心地だ。
けれどそれと共に心が重くなって。
痛い、というのだろうか。
そんな思いで一杯だった。

それでも涙は流れない。
ここで泣くわけにはいかないから。
俺が下手に取り乱したら、皆が混乱するだけだ。
そんなの、言い訳にしかならないけど。

生きて、戻って来るって。

本当は泣き方がわからなくなっただけ。
喪失感の大きさに呆然とするしかなかった、だけ。


鏡を見ればいつもそこには俺が居た。
けれどそこに映るのが、いつからか俺じゃ無いような気がして仕方がない。
もう切ってしまって無いはずの長い髪すらあるように思えて。
自分の姿を見る度にあいつを思い出すんだ。

「アッシュ。」

どうして、

俺はお前なんだよな。
思うのが馬鹿馬鹿しくなるほど何度でも繰り返される思考。
俺は俺じゃなくて、お前なんだ、って。
だけどよくわからない。
俺はお前なのに、

『今お前は、どこにいるんだ?』

俺の方から話しかけられれば良いのに。

よくわからない感情が膨らんでいく。
それが大きくなればなる程、俺は俺でしかなくなるんだ。
おんなじ顔で、おんなじ声で。
性格だって似てるらしい。
でも俺はレプリカ。
・・・偽物。
あいつが呼ぶように、屑でしかない。
それでも、俺は、俺として。

「もう一度お前に会いたいのに。」

いつも怒らせてばかりで、ごめんな。
なんで怒ってるのかもわからなくて、ごめん。
けどひとつだけ譲れないこと。

俺はお前だけど、俺、なんだ。
俺は俺として、お前の側に居たいんだ。

だから。
やくそく、守れよ。


ただ信じられないだけ。
きっとお前は無事だって。
そう思い込みたかった。

お前がもういないって、他でもない俺が一番よくわかるけれど。

思い込むことすら許されないならこんな繋がり、いらないのに。

それでも、
それでも俺は。
やくそく、果たすから。


またすぐ会えるさ。
そしてお前の傍に居るって決めたんだ。
もう少しだけ待っててくれよ。

だから今だけ、










おやすみ






END






「消失に近い者の傍ら」
ルーク独白。アシュルク。
短文ふたつ書いて無理矢理合体。
無理しすぎなのが見えるのが痛いOTL



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