きっと、お前は俺を忘れないだろ。












死にたくない。
もうすぐ跡形も無く消えてしまうと知ってしまった今だからこそ、思えること。
「なぁ、アッシュ。星って綺麗だよなぁ。」
「気色悪い。とうとう脳まで屑になったか。」
相変わらずの口の悪さ。
でも今ではもう慣れてしまったのか、嫌な気分にはならなかった。
「でも、事実だろ。アッシュは星が嫌いなのかよ。」
「・・・まぁ、嫌いではない。」
「素直じゃねぇなぁ。流石俺の被験者。」
静まり返った夜の街。
人気のないその場所に、二人だけ。
「卑屈野郎と一緒にするな。」

「なんでだよ。俺は、お前と一緒がいい。」

同じのは顔だけで、中身なんて正反対。
そんなの、いい加減承知してるさ。
だけど、わかってるから、尚更。
「俺は俺だ。いくらお前が俺のレプリカだろうが、それは変わんねぇんだよ。」
「うん、知ってる。」
「・・・だったら、お前はお前だと主張しろ。」
「認めないくせに。」
それに、そんなことしたって無駄。
俺は俺の価値がわからない。
そんな俺が何を主張したところでなんになる?

もうすぐ、死ぬのに。

「俺、アッシュのこと、好きだ。」
「聞き飽きた。」
「酷ぇな、いつでも真剣だぜ?」
「関係ない。」

こいつはどこまで俺を突き放すんだろう。
すき、って『俺』が主張してるのに。
「やっぱりアッシュは、俺の存在なんて認めてくれないんだな。」
「・・・認めたくはない。だが、お前が居る事実は認めざるを得ない。」
そんな認められ方は、嫌だな。
俺を俺として認めないならそれでいい。
それでいいから、
「俺はお前として、お前の中に溶けてしまいたい。」
「断る。」
「・・・お前さぁ、ちょっとは空気読むとかしろよ。」
笑わずにはいられないくらいに自己主張の激しい奴だ。
飽くまで、自分は自分、か。
じゃあ、アッシュの中での俺って、どんな存在?

「アッシュ、好きだ。」
聞けない。
「しつこい。」
聞きたくない。
「仕方ないだろ、好きなんだから。」
聞くのが、怖い。
「・・・お前、いつも変だが今日は余計に変だ。」
「どこが。」
「全部。」
ああ、俺はこんなことにさえ幸せを感じてしまう。
アッシュの中に『いつも』の俺が居る。
嬉しくて、堪らない。
「アッシュ、す・・・、んっ。」
もう一回、言おうとしたらさりげなく口を塞がれた。
甘い、甘い香り。
そんな錯覚を覚えるくらいに幸せな、キス。
「・・・、しつこいと言ってる。」
死んでも、失いたくない、時間。

なのに、もうすぐ無くしてしまう、時間。

「なぁ、アッシュは俺のこと、どう思ってる?」
「屑。」
「それ以外。」
「・・・。」
アッシュは何も答えなかった。
答えなかったけど、代わりにもう一度深いキスをくれたから。

やっぱり、すき。

「・・・い。」
「なんだ?」
「死にたく・・ない・・な。」
「俺だって御免だ。」
よく言うよ。
つい最近、思いっきり命投げ出そうとしてたくせに。

「アッシュが死んだら、俺が泣いてやるよ。」
「いらん。」
「なんで。」
きっと、俺がお前の死様を見ることは叶わないだろうけどさ。
約束するのは、いいじゃないか。

「俺はお前のために泣くからさ、お前は俺のために、生きてくれよ。」
「・・・本当にお前、今日はどうかしてるぞ。」
「いいだろ?」
「・・・、チッ、まぁいい。俺は生きれるだけ、生きる。それは変わらん。」
「うん。」

それでいい。
俺は死にたくなんかないけれど、もうすぐ消えてしまうから。
だから、せめて。











お前の中で、できるだけ永く。





END






「永遠を願う約束」
アシュルク。
なんか死ぬとかどうとかいうことを書き始めるとどこまでも暗くなるorz
卑屈根性万歳。



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