そう、それは恋の始まり。












「アニース。ちょっといいですか。」
「なんですかぁー?大佐」

少し、離れた場所からそんな声が聞こえて。
ジェイドとアニスが二人でなにやら企んでいるかのような姿が目に入った。
また、仕事絡みの話だろうか。
それとも何か個人的な?
「ルーク?どうかしたか?」
悶々とそんな事を考えていた意識が引き戻される。
同時にガイと一緒に剣の手入れをしていたことを思い出した。
「あ、いや、なんでもない・・・。」
普段に比べて少し小さい声。
それに気付いたのか、ガイは些か顔をしかめた。
「・・・またか。」
「え?」
「どうせ、ジェイドのこと見てたんだろ?」
図星をつかれて思わず黙り込む。
こんなことだから、わかりやすいって言われるのは承知してるけれど。
「・・・お前、その、旦那のことが好きなのか。」
いかにも聞きづらいといった声でガイが尋ねる。
尋ねられて、はいそうです、なんて答えられるはずがない。
「な、んなわけねぇだろ!なんで俺があんな変態鬼畜眼鏡・・・っ!」
「はいはい。お前、心の友に隠しごとはだめだろ。」それを言われると、弱い。
仇の息子をこんなにも考えてくれるガイの言葉、無下になんてできるはずない。
「・・・別に、好きって訳じゃない。」
「好きでも無い奴のことが気になって気になって剣の手入れにも身が入りません、ってか。」
「いや、だって、あいつ・・・。」
「ルーク。」
「・・・やっぱ、好き・・・なのかなぁ。」
気になって仕方ない、っていうのは本当だ。
ジェイドが誰かと話すだけで、気になって気になって・・・。

「おやおや。それは困りましたねぇ。」
「っ!?ジ、ジェイド!?」
「あぁ、旦那。丁度良いところに。・・・こいつの悩み、聞いてやってくれよ。」
「ふむ・・・。了解しました。」
ついさっきまでアニスと話をしていたはずなのに。
突然現れたかと思えば、いやらしく笑って、おれの前に座った。
それを見計らって、ガイは立ち去る。
なんだろう、この仕組まれたように都合が良いのか悪いのか分からない状況は。
「で、悩みとはなんですか、ルーク。」
「・・・ジェイド、俺とガイの話、聞いてたのか?」
「ええ、ばっちり。」
顔が一瞬にして熱くなったのが自分でもわかる。
さっきの話を聞いてたってことは、俺のあれもだろ?
それなのにこいつの様子は普段と何ら変わらない。

「じゃあ・・・ジェイドは俺のこと、どう思って・・・る?」
「それは難しい質問ですねぇ。簡単言えば・・・厄介なお子様、ですか。」
嫌味な笑い付きであっさりと答えられた。
俺の気持ちを知っていながらこの反応。
なんとも思ってないならまだしも「厄介」なんて、最悪だ。
「・・・ジェイドなんか、ピオニー陛下のブウサギになっちまえ。」
「面白いのに笑えない冗談ですねぇ。」
うつ向いて、呟いてみた。
そうしたら呆れたような声が返ってきて。
あぁ、また「厄介なお子様」だって思われちまう。
でもどうしようもない。
俺は今までジェイドみたいに嫌味な奴、会ったことないし。
「・・・まぁ、厄介なお子様も、それなりに成長はするみたいですから、嫌いじゃありませんよ、私は。」
「え?」

ふと、ジェイドと目が合った。
その表情は、今まで俺は見たことがなくて。
嫌いじゃない、と言った言葉が本当かどうかなんてわからなかった。

「・・・じゃあ、俺も。嫌味で鬼畜で変態な眼鏡のおっさんは、嫌いじゃない。」
「そんな人どこにいるんですかねぇ。」
とぼけてまた笑うその眼は確に俺を見ていた。
笑い合って、お互いを見る。
そんな時間も嫌いじゃない。
俺も、ジェイドも素直じゃないから、今はそれで十分だ。











嫌いじゃないなら、好きになってもらえばいい。






END






「嫌悪を笑う者の愛情」
ジェイルク。
テーマ、焼餅ルーク。
だったけど結局何がなんだか。



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