あのとき、確かに俺はあいつに失望した。した、筈だった。











出来る限り魔物に目を付けられないようにしながら、走る。
ベルケンドに居るアッシュたちと別れてから既に1、2時間は経過していた。
これだけ全力疾走し続けても、まだ疲労感は襲ってこない。それほど必死なのかもしれない。

「・・・あいつ、落ち込んでなきゃいいんだけどな。」
前を見据えて呟いた。
どうせ今頃は目覚めているだろう。俺にはもう待つことしかできないのだが。
あれだけのことがあって、あまりに自分勝手なあいつに失望していた俺。
なのに、何故今もこうやってあいつのことを考えて、あいつの元に行こうとしているのか。
きっと、ベルケンドで別れた仲間たちはそう思っているんだろうな。

実際、外殻世界に戻って来るまではあいつのことなんか放っておこうとは思っていた。
けれど、アッシュと行動を共にしてれば思い出すなという方が無理な話だ。
あいつはレプリカで、7年前までの本当の幼なじみはアッシュなのかもしれない。
それはわかっているし、ナタリアは「本物」との約束があったんだ。喜んで当然だろう。
それでも、俺が顔の同じあいつらに抱く感情なんて全くの別物で。

俺にとっての「本物」は、「オリジナル」とは違う。
本物を決めるなんて事自体おかしい気もするが、俺の答えは間違っていないと思う。
少なくとも、俺は納得したんだ。記憶だけはいつまでも素直なものさ。

失ったと思われていたあいつの記憶は実際は存在しないものだった。
あいつは元々過去なんて気にしない奴だったから、そんな事実はどうでもいいと思うだろう。
だけど、考えてもみろ。
7年前にあいつが生まれたんだとすれば、俺はあいつが生まれてから今での記憶にずっと存在してるってことだ。
いつも、傍にいた。自惚れでも、自信はある。
だからさ。どうせ寂しがってるだろうあいつを支えてやらなくちゃいけないのは俺なんだ。
そう考えたら、失望してた自分が馬鹿馬鹿しくなった。
例え、誰もがあいつを非難するとしても、ひとりくらい味方になってやらなきゃキツいだろ。
レプリカだって、人なんだ。
自分勝手なあいつの性格はこれからどうにかしてやればいい。

アッシュにはナタリアがいる。
だからこそ、俺はルークの所に行く。









あいつの傍だけは絶対に、譲れない。







END







「記憶を守る者の自信」
「想いを選ぶ者の決断」のガイ視点。
ガイと再会する場面を書くかは気分しだいなので続きにしないで分けました。
友情で突っ走るかなぁ。でもなぁ。

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