無理するなよって言ってその通りにするようなヤツじゃないのは、わかってた。












広々とした草原の中、一部だけが似つかわしくない色に染まる。
浴びた返り血を拭って近くの木に寄りかかった。
「息があがってるぞ、ルーク。」
声を掛けた相手は不満そうにこちらを振り返る。
しかしもう体力の限界なのか、抗議するでもなくその場に座り込んだ。

「それにしても、多いな。いつもとは比べものにならない。」
「全く嫌になりますね。今は誰に追われているでもないというのに。」
ジェイドが溜息をつきたそうな顔をで辺りを見渡す。

道に転々と存在するのは大小を問わない魔物の屍骸の数々。
今日はもう何十と連戦を繰り返していた。
その間にアイテムも殆ど底を尽き、残るは気力のみと成り果てている。
こうなるともう前衛として戦うルークと俺は当然のように休む暇も無い。
「大佐ぁ。もう限界ですよぉー。こんなにかよわくて可愛い女の子が3人もいるんですから!」
今の場合、果たして可愛いというのは何の関係があるのだろう。
だが事実、これ以上女性陣に負担を強いるわけにもいかなかった。
ティアもナタリアも既に下を向いてしまっている。
「しかしですね、アニス。限界と言われても、街に辿り着かなければ我々には打つ手無しです。それはあなたもわかっているでしょう。」
「うー・・。」
休もうにも、魔物は容赦なく襲い掛かってくるのだ。
何しろ場所が場所だった。
司会に入るものの殆どが緑。しかも多くは背の低い草。
どうしようもないのは明白だが、可哀想だからアニスを励まそうとした。

瞬間。

視界の端に緑以外の色が飛び込んだ。
「また来たぞ!!」
「・・・本当に忙しい日ですねぇ。」
今度こそ溜息をついたジェイドがすぐさま譜術を唱え始める。
それを認めておれは魔物に勢いよく切りかかった。
疲れのためかいつもより体が重く感じられる。
「こらぁ!ルーク!座ってないで手伝ってよー!!」
「・・・わかってるよ・・・!」
アニスにどやされてようやくルークも戦闘に加わった。
しかし、見るからに満身創痍といった感じだ。あまり当てにはできない。
「なるべく怪我はしないでくださいねー。ティアもナタリアも、もう治癒術は使えないでしょうから。」
そうジェイドが釘を刺してきた瞬間に、俺は自分の体が浮くのを感じた。
鈍い痛みが走る。
どうやら魔物に吹っ飛ばされて気に衝突したらしい。
「ガイっ!?」
「おやおや・・・。注意したばかりだというのに、困った子だ。」
こういう時はさすがに只々涼しい顔をしているジェイドが恨めしくなる。
だが、文句を言う暇も余力もなく。
途切れかかった意識を無理矢理たたき起こして、立ち上がった。
「大丈夫かよ・・・?」
「あぁ、問題ないさ。お前よりマシだ。」
気遣ってくれるのは嬉しいが、どう見てもルークの方が辛そうだ。
そろそろ剣を持つ腕も怪しくなって来ているらしい。
「無事でなによりですね。・・・・フレイムバースト!」
「こっちも行くよ!リミテッドーっ!!」
俺がルークの傍に戻るまでの間、ジェイドとアニスはほぼ同時に術を放った。
敵が仰け反ったのを見計らって俺が連続攻撃を仕掛ける。
すると魔物は地面に大きな音を立てて崩れ落ちていった。
その様子を確認して、各々肩を撫で下ろしのがわかる。

「・・・ガイ。庇ってくれて、ありがとう。」

すれ違いざまにルークが小さく呟く。
どうやら、俺が先刻吹っ飛ばされた理由がバレていたらしい。
わかんない程度だったはずなんだがな。
思いながらも俺はそれに微笑むと、先刻から続く鈍い痛みなどもうどうでも良くなった。
「ホント、素直になったもんだよなぁ・・・。」
「ん?」
「いや、なんでもない。」

無理するなよって言ってその通りにするようなヤツじゃないのは、わかってた。

だけどそれもどうやら変わり始めたらしい。
前なんかお礼を言うことも、謝ることも無かったってのに。

「俺は生意気な方が可愛げがあると思うんだけど。」
「は?」
「何でもない、何でもないっと。」
そう誤魔化すと、俺は逃げ出すようにルークの傍を離れた。








変わっていくお前との距離が広がっていくのは、嫌なのに。





END






「過去を想う者の惑い」
長くなったのでカット。
続きがあるはずなんですがまだ書いてないので無いことになるかもしれない(ヲイ
はっきりガイルクかルクガイか決めないとそれらしい雰囲気が出せないのが痛い。

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