嫌な予感を馬鹿にするもんじゃない。












「なぁ、ガイって酒好きなのか?」
ケセドニアに着いて、自由行動をとろうと皆が解散し始めたとき。
いつもなら一番最初に皆から離れて商店を見に行くルークの姿が今回はまだそこにあった。
「酒?なんだよ、突然。」
唐突に質問を投げかけられるのは慣れている。
けれど、まさかルークが酒の話を切り出すとは思ってもみなかったため、思わず聞き返してしまう。
そしたら何故かルークは言葉に詰まって。
「え。・・・えーっと。あの、その、あ!あれだよ、ガイってよく酒場にいるからさ!ちょっと気になって。」

怪しい。

そう思わざるを得ない返答に、俺は心の中で溜息をついた。
しかも酒のみに関心があるのではなく、どうやら俺に関わったことらしい。
こんなときのルークは非常に危険だ、と俺の経験が語る。
「ふーん?・・・まぁ、嫌いってことは無いが好きって程でもないな。」
「じゃぁ、なんで酒場に行くんだよ。」
とりあえず当たり障りのなさそうな答えを返してみたら、今度は酒場に話がずれた。
ということは、酒じゃなくて俺の話か。
一瞬で嫌な予感が倍増した。
「酒場には旅人が多く集まるんだ。情報を手に入れるには持って来いってことさ。」
「へぇ、意外だな。」
関心しているような素振りを見せているルーク。
だけど、今のこいつは絶対にほかのことを考えている。
何か、これ以上関わらない方が俺の身のためだとも思えるようなことを。
「じゃぁさ!今度俺も―――」
「成人してからな。」
ルークの言葉を遮る。
話の流れからして、ルークが酒場に行きたいと言い出すのは読めていたから。
「いいじゃん!別に減るもんじゃねぇだろ!」
「あのなぁ。」
はぁ、と大きく溜息をつくとルークも一層不満げな顔をした。
放っておくわけにも行かず、俺は出来るだけ速く話を終わらせて逃げることだけを考える。
それが無駄なことだというのは解っていても認めたくない。
「だったら聞くが、なんだってお前は突然酒の話を持ち出したんだ?」
「うっ。・・・そ、それは、その。」
本日2回目。
またしてもルークの言葉が詰まる。
その答えを聞きたく無い気もするのだが、聞かなくては逃げられない。
しかも、何故かこういうときのルークは嫌に素直だ。
「・・・ジェイドが・・・。」
「ジェイド?・・・ジェイドがどうしたんだ?」
やばい。本格的に聞きたくなくなってきた。
ルークだけでもろくでもないことを考えるというのに、そこにジェイドの名が加わったらどうなるというんだ。

「お呼びですか、お二人とも。」
ビクリ、と体が思い切り反応してしまう。
今一番関わりたくない人物。ジェイド・カーティス大佐、その人だ。
「・・・旦那。ルークに何を吹き込んだんだ?」
「おやおや。吹き込んだとは人聞きの悪い。」
ジェイドの余裕の微笑みに、顔が引き攣る。
ルークは既に明後日の方向を向いて何も言わない態勢に入っていた。


「ただちょっと、ガイを酒で酔わせて弄ぶものも面白そうだと二人で相談していただけですよ。」



瞬間、俺は笑顔に背を向けてケセドニアから飛び出していた。





END






「予感を侮る者の後悔」
一応ルクガイのつもりで書いたんですが。
いつの間にかルクガイ+ジェイガイになってました。
そもそもなんでこんなお馬鹿な話になったんだろう(笑


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