「・・・ティトレイが料理?」
ペトナジャンカを出発してサニイタウンへ向かう途中。
街へ辿り着くためにはトヨホウス河を下った方が良いとのティトレイの提案により、一行は河の近くにある小さな小屋に来ていた。
しかし、河下りに必要な船は一足先に王の盾の妨害によって破壊されており、人手も少ないこの場所では修理するのに3日かかるとググラは言う。
こちらとしては急を要する旅。
王の盾が近くに居るというのに手を拱いて修理を見守っている気にはなれず、ヴェイグ達はすぐに必要な材料を集めてこようと申し出た。
それでもペトナジャンカから何時間も歩き続けてきたのだ、当然のように腹は減っており、逸早くマオが根を上げる。
だったら、とマオの言葉にティトレイは反応し、自信満々に料理当番を買って出たのだった。
「なんだよ、その疑いの眼差しは。」
「・・・いや。」
「でも、びっくりだよネ。ティトレイが料理好きだなんて。」
「おう!料理は男のロマンだぜ!!」
「・・・。」
ヴェイグが何か言いたげにティトレイを見る中、当の本人は特に気にもせずに張り切っている。
木材を集めながら採取しているキノコも不自然なほど赤く、ヴェイグの不安は募る一方だった。
「ヴェイグは料理とかしなさそうだよな。」
「・・・まぁな。」
「じゃ、クレアさんは?・・・あっ、お前!さてはいっつもクレアさんの手料理食ってんだろ!!くーっ!羨ましいぜ!うちなんか姉貴が料理ダメだから さー。」
本当によく回る口だ、とヴェイグは呆れながらティトレイの話を聞いている。
それにしても、セレーナが料理下手だから自分がしている、ということを聞いて、妙に納得してしまうヴェイグだった。
「・・・クレアも料理は苦手だ。」
溜息ともつかない息を吐いて、地面に落ちている木材をまた拾う。
「マジ!?・・・そーかそーか。お前も大変なんだなぁ。」
何故かティトレイは同情するように言う。
果たして彼の中でヴェイグとクレアはどんな関係になっているのだろうか。
それが気になり、ヴェイグは敢えて否定して、
「別にオレが困ることは無い。」
と、不機嫌さを顕にする。
その様子を感じたのか、将又照れ隠しだととったのか、ティトレイはほんの少しの間ヴェイグをじっと見つめ、やがて満面の笑みを浮かべて。
「・・・やっぱ、羨ましいな。」
「・・・?」
その後すぐにマオが来てティトレイにそれだけ採っていたのではないかと思わせるほど大量のキノコを渡しに来たので話は中断されてしまったが、最後に呟かれ た言葉が寂しげであったことにヴェイグは気付かない。
相変わらず涼しげな顔をしたヴェイグの体温は普段の倍以上高くなってしまっていたから。
直前に向けられた笑顔があまりに眩しくて。





おかげでヴェイグは毒キノコ入りスープを口にする気が起きなかったとか。
それは果たして運が良いのか悪いのか。





END





「それはある意味の毒」
ペトナジャンカでの出会いの続き。
ヴェイグはティトレイが自分とクレアの関係を勘違いしているのが気に食わない。
ティトレイはヴェイグに大切にされているクレアが羨ましい。
・・・実は既にこっそり両想い(笑
というかクレアとセレーナは料理下手というのは単なる私の妄想です;

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