おれは笑ってなきゃいけないんだ。これからも、ずっと。













「・・・レイ。・・・ティトレイ!」
おれの名前を呼ぶ声がした。
それは既に聞きなれた声で。
どこからともなく聞こえてくる声の主を探そうとしても、ただ広がるのは真っ暗な世界。
そういえばおれは寝ていたんだっけ。
でも、朝日の眩しさも感じないから多分まだ外は暗いんだろう。
だとしたら何故ヴェイグがおれを呼ぶ?気のせいか?
今の今まで眠っていた脳にはそんなことを考えることすら億劫だ。
仕方が無いからうっすらと目を開ける。
あたりはほんの少し明るいけれど、まだ十分に暗い。
「・・・ん?・・・あれ、ヴェイグ・・・?」
しっかりと目を開けて、目の前に映ったのは心配そうにおれを見ているヴェイグの顔。
そこに居るのが彼だとわかっていたはずなのに、それでも彼では無いような気がしていて。
はっきりと確認できると急におれの眠気は冴えていった。

「ティトレイ、大丈夫か?」
「・・・へ?何が?」
「酷く魘されていたぞ。」
言われてから気が付いた。
おれの声はいつもより枯れていて、服は汗でぐっしょり濡れている。
凄く、凄く久しぶりなこの感触。
自分がここに居るのに居ないように感じる、なんとも不思議な。
「・・・ティトレイ?」
おれが何も言わないでいると、ヴェイグの顔が心配そうに歪む。

あぁ、おれが起こしちまったんだよな。ごめん。

口に出していうべき言葉なのだろうけれど、声を出す気力も無かった。
だから、せめてと思ってヴェイグに向かって笑ってみる。
そうしたらまた、彼は苦しそうな顔をして。
「・・・嫌な夢でも見たか?」
聞かれてもまだ何も言わない。・・・言えない。
今口を開いてしまったら、きっと何もかも吐き出しちまう。
このいつになくもやもやしてる感情を、全て。
そんなことできる筈がないだろう?
声を出さずに首を振って、下を向く。
頼むから何も聞かないで。
俺はまだ、お前の中で明るくて前向きな馬鹿を演じていたい。

だから。

「・・・ヴェイグ?」
不意に頭の上に何かが置かれた。
それがヴェイグの手であることはすぐに理解できたのだが、今度はヴェイグの方が黙って口を開かない。
やがて、その手は俺の頭上で少しずつ動いて。
こういうのを撫でてるっていうんだろう、と意味も無く思った。
きっとこれ以上彼は口を開かない。
だって、その手が温かいから。
何も聞かないでいてくれるって優しさが伝わってくる。
「・・・ありがとな。」
その声はヴェイグに届いただろうか。
いつもより、小さくて、枯れていて。
何よりおれはそのとき、泣いていたから。












おれは泣いちゃいけないんだ。
でも、せめてその手のぬくもりが無くなるまで。
















END





「夢に蘇る傷が」
日記でもそもそと書き殴ってたティトレイの過去捏造設定に基づいたシリアス・・・で・・す?(吐血
全然設定役に立ってませんけどね。あはは。
なんかもしかしたら続くのかなぁ;

とりあえず、日記で毎回付き合って下さってる某御方へ捧げます!(迷惑

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