01:ただ、泣いた すぐ傍にロイドが居た。 だからいつもみたいに後ろから抱きしめてやった。 「どうした?」 いつもなら鬱陶しいって手を振り払うのに。 こんな時だけ笑顔で答える。 「・・・なんでもない。」 ただちょっと、雪が降ってただけ。 それだけだから。 ロイドは優しく俺の頭を撫でた。 ただそれが温かくって。 温かくて、泣けてきた。 だがらそのままロイドの肩に顔を埋めて。 ただ、泣いた。
02:なんで? 「ロイドくん、そんなに勉強嫌い?」 「おう、大嫌いだ。」 ちょっとそんなことを聞いてみたら即答された。 できないことを嫌いになるのは当たり前だけど。 「なんで、嫌い?」 何故か聞いてしまった。 「なんで・・・って。嫌いなもんは嫌いなんだよ。」 「・・・まぁ、そうだよな。」 今もこうやって勉強してる。 相変わらずロイドくんの手は全く動こうとしない。 「でも、俺。わかんなくても数学は好きだぜ、最近。」 そうやってロイドは俺に笑顔を向けた。 理由は敢えて聞かないことにして置こう。
03:声が震えてた 「ちょっと、外行こうぜ?」 そう言って俺さまはロイドくんと雪見に外に出たわけだ。 正直、こんな大降りの日に外になんて出たくなかったけど。 ロイドにだけは、話してもいいと思ったから。 「どうしたんだよ、突然。」 俺がいきなり昔話を始めたから、ロイドくんは驚いてた。 それでも嫌だとは言わずにただ俺の話に耳を傾けていてくれた。 話をし終わった後、あいつはいきなり俺に抱きついた。 ロイドくんのほうが抱きついてくるなんて、珍しい。 「大丈夫か?」 「・・・何が?」 俺はいつもどうりに振舞えていると思ってた。 だけどこいつは気づくんだ。 「お前、声、震えてるぞ?」 思わず笑ってしまった。 それを見てロイドくんはかなり呆れてたけど。 俺は、お前が居れば大丈夫だって、わかったから。
04:窓に映る 窓の外に雪が見えた。 見たくも無い、 それでも視線が反らせない、 真っ暗な部屋で雪の明かりだけが照らし出す色、 窓に映った髪の色、 窓の外には紅い雪、 見てはいけない、 それでも目に映る紅、 「ゼロス。」 どこからか名前を呼ぶ声、 止めろ、 俺を呼ぶな、 聞こえた声は幾度となく俺の中で繰り返される、 「ゼロス。」 紅い雪が見えなくなった、 それでも、まだ赤かった、 顔を上げればそこに、 「・・・ロイド。」 赤いお前を見るたびに思う、 いつか紅の記憶が全てお前で染まるのではないかと、 血に染まったこの髪さえも、 窓の外には只白い雪。
05:本気で怒るぞ 「俺がロイドくんのこと嫌いって言ったらどうする?」 「別に。」 なんだか最近ロイドくんに質問するといつも即答されてる気がする。 今回のはいつもより真剣な話だったからか、いつもより、悲しい。 もし俺がロイドくんに同じ質問されたら多分「泣く」って言うぞ? それなのに、なんだよこの違い・・・。 「もしかしてロイドくん俺のこと嫌い?」 「まさか。」 また即答。 でも今のは嬉しかったから自然に笑みが零れた。 俺さま、ロイドくんの一言一言に一喜一憂しすぎてるかもしれない。 「・・・・ロイドくんなんて嫌いだ。」 今度はそんな、心にも無いことを言ってみる。 ほんの少しでも、ロイドに反応してほしかったから。 「・・・あのな。」 「ん?」 「態とそんなこというの、やめろ。」 「・・・態とじゃなきゃいいの?」 本当に嫌いだなんて言ったら、ロイドくんも嫌いになる? 「・・・俺の気を引くようなこと言わなくたって、ちゃんと俺、お前のこと好きだから。」 「わー・・・殺し文句・・・。」 だって、言わなきゃお前の気持ちがわからない。 寂しいから。 だから、敢えて嫌いという。 するとお前は怒ってくれる。 それが、嬉しい。 だから、そんなお前に怒られたって構うもんか。