高温岩体実験発電所の撤退に思う

新聞で平成14年8月一杯で山形県最上郡肘折温泉地区にあった国の
高温岩体実験発電所の撤退が小さく報道されていた。
 私は愕然とした。現在のエネルギー確保への危機感が充満している時期に、
充実どころか撤退とは!と なぜだという疑問にとらわれた。

 由良沖の波浪発電の実験所も解散したし山形県には何も無くなるなあと
寂しい気持ちになった。

 私は前から地熱を利用したエネルギ−確保に興味があった。
 岩手県の松川地熱発電所、葛根田地熱発電所、宮城県の鬼首地熱発電所等
を訪れてその可能性に期待をしていた。
 8月3日(土)に、本施設が閉鎖しないうちにぜひ訪れようと思い立ち出発した。

 所在地は次の地図の右上の矢印の方向にある。途中の道の様子も次に示す。





やがてテントが見えてきました。係りの人が寄ってきてくれ案内をしてくれました。
大変丁寧な歓待を受けました。




上の写真の左から二人目の方が、「新エネルギー・産業技術総合開発機構地熱開発室」主査の川崎 耕一氏でしたが
大変に分かりやすく、しかも丁寧な説明を受けました。

 
この時に知ったのですが一般の地熱発電とここの岩体発電は別の方式にわるもので
あると教えられました。

 まず地熱を活用する方式を次に示します。

 
 この図の中の高温岩体エネルギーが当施設の分野なのです。この方式は大変に精密でかつ
困難なものでした。
 地下約2000mの高温の岩体を見つけだし、その岩体に約200mにわたりヒビを
作り出し、そのヒビに水を注水する。そして暖められた高温蒸気を地上に取り出し、タービンを
廻すという方式でした。
 地下の何も見えない所で手探りでこのようなシステムを構築するとは人間業とは思えません。
 このようなシステムが山形県にあったということは画期的だったのだなと感動しました。

 下の中央のものが地下からの蒸気を取り出すバルブです。


 さて、下の人物が川崎氏です。氏といろいろ話をしました。
この岩体発電の難しさと有望性について熱く語ってくれました。
 しかし、当施設が閉鎖後は、この全施設は解体され、更地にして地主に返還す
るのだそうです。
 そして、その後は何の痕跡も無くなってしまうとのこと。
 大変に寂しくなりますね。
 もっともっとPRをすることが必要だったのでないでしょうか。
 宮城県の鬼首発電所は立派な自然とエネルギーに関する教育施設として自立しています。
 山形県は前述したとおり波浪発電実験所も無くなってしまいました。ここ岩体発電実験施設も
無くなります。ほんとうに寂しい県になってしまいます。


 私は日本のエネルギー開発に対する氏の今後の更なる挑戦を願い、寂しい気持ちで別れを
告げました。


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