天地人 もう一つの関ヶ原 慶長出羽合戦
    悲劇の畑谷城を訪ねる


 現在テレビで放映中の人気大河ドラマ「天地人」のおかげで米沢が大人気である。
 一方山形市周辺はひっそりとしている。
 これも直江兼続の対抗馬の山形城主最上義光の暗いイメージからなかなかドラマに
 登場しにくいことがあるかもしれない。
 しかし関ヶ原で東西の軍勢がにらみ合っていたときにここ山形の地でも大きな戦いが展開
 されていた。ここでの主役はやはり直江兼続と最上義光の二人であった。
 東軍の最上勢と西軍の雄上杉勢との戦いであったがこれは関ヶ原の代理戦争でも
 あった。
 1600年(慶長5年)旧暦9月11日に上杉軍の本軍は直江兼続を総大将として米沢を出発、
 長井、白鷹を通り山形城下を占領せんものと攻め上がった。
 その数2万4千人だったとのことである。
 しかし一気に山形城を攻めることは出来ない。途中の山形の西域の山中にに畑谷城が
 あり常に米沢からの侵入に対し多くの楯を設けて備えていたからである。
 畑谷城の勢力は500人前後であったと思われるが上杉軍はこの畑谷城主江口五兵衛
 光清を大将とする軍勢に手こずったと言われている。
 直江は江口を高く評価していたので上杉軍に協力せよと勧めらたがそれを断り最上軍の
 砦として戦うことを決め徹底抗戦をした。
 しかし結局は多勢に無勢で城は落ちた。
 何故かこの時直江兼続は皆殺しを指示している。
 直江は米沢に「・・去る十三日最上領畑谷城乗崩撫切(皆殺しのこと)申付、城主江口兵衛
 父子共首五百余討・・・・」と報告したとあるので相当の戦いであったと思われる。
 何故直江兼続がこの小さな山中の城主一族を徹底して皆殺ししたのかテレビの「愛」を
 イメージする姿からはどうしても理解出来ない。
 実際に畑谷城跡に行けば解るが五百人すらもこの山中で生活できたかと疑われるほど
 の小さな山城である。
 どうしてここまで徹底して滅ぼしたのだろうか。永遠の謎であろう。

 さて、平成21年10月23日は秋晴れの素晴らしい天気であった。
 私は午前中の仕事が終わったのでこの畑谷城を訪れようと山形市を出発した。
 15年程前に一度訪れようとしたのだが当時はうっそうとした所で登り口すら定かでない地で
 結局は登れないままに戻ったことがあった。
 現在の天地人ブームできっと整備されているはずだと考え再訪を期した。
 次が登り口の光景であるが幟も立ち史跡としての雰囲気が横溢していた。

 畑谷城のある館山は次の写真の最も左側の山である。左から館山、尖り森、東黒森山


 城への道は正面民家の裏を左に曲がって山に入っていく。


次が城への道である。とても整備されており迷う心配もないしボランティアのガイドもいる。


 次が館山すなわち主郭のあった所でさしずめ天守閣のあったところに相当する地域で
ある。これで分かるように非常に狭い場所で大勢の兵が詰められる場所ではない。


 碑には歌詞が刻まれている。全滅した江口軍の心を良く表現していると感じる。

この城の一番の見所は各所に設けた空壕(からぼり)の存在である。
山の標高は549mなので大規模な城郭などは作れない。
そこで敵兵が侵入すると予想される平坦な地帯に執拗に空壕を作ったのだろう。
壕の土手には兵を置き壕を越えようとする敵兵を突き刺す戦法でこの小さな城を
守ったのである。
次は三重空壕についての写真である。


実際の空壕の様子である。

さて当時の山城の様子を的確に表現した写真パネルが掲示されていた。
非常にこの畑谷城の当時の様子を正しく表しているものと思われる。
ぜひ見ていただきたい資料である。


さて本論に入りたいと思う。
ここの戦の勝利を経て兼続はいよいよ最上義光の領地に攻め入ることとなる。
しかし現在の山形市の西域には長谷堂城が控えており、ここの城主志村伊豆守光安(
しむらいずのかみあきやす)もなかなかの人物で上杉軍が山形城を攻めるのを徹底して
守りきった。
この戦いの途中9月29日に関ヶ原で東軍勝利の報が伝えられて上杉軍は撤退となったが
この時直江兼続は自害も考えたが有名な前田慶次郎に俺がしんがりを務めるから大将の
お前は一刻も早く帰陣しろと諭され慶次郎は自ら最上勢に切り込み兼続の脱出を助けた
という話は慶次郎らしいなあと何時までも人の記憶に残り現在に至っているのである。
もし私が天地人の脚本家ならドラマの最後にこの辺の話を盛り込み前田家をも巻き込んだ
壮大なドラマに仕立てたのだがと夢を見たりした。

ここで禁句の「もし」を使わさせていただくなら、もしもう少し関ヶ原の戦いの決着が早く決まっ
ておれば有能な江口氏一族も貴重な命を失わずに済んだものと思う。
本当に歴史は残酷なものである。

次に江口一族の墓地がある長松寺を紹介する。


最後に畑谷地区のガイドマップを掲示しておきます。


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