本物の店を求めてシリーズ
山形県の南部に位置する長井市伊佐沢はちょっと変わった土地である。長井市より東に最上川を
渡るのだがすぐに小高い山を越えなければならない。
このために市街地からはほんの少しの距離なのにまるで別世界に入ったかの感にひたれる。
伊佐沢への入り口は大きな切り通しになっているのだがこの切り通しも昔に比べると標高も
下がりおだやかな勾配の道になっている。私の記憶では20年ほど前は相当の急坂だった。
だから長井市とは文化・伝承的な面での良い意味での隔絶があったのだと思う。
このために独特の雰囲気が残っており貴重な文化地域であると感じている。
一般的には久保の桜で有名な土地だが実は伝承的面での遺産が多い土地である。
ここはお神楽の里である。あのお神楽の顔である獅子がしらがこの地で作られている。
そしてこの土地に獅子がしらと共に生きているそば屋があると聞いていた。
なんでも獅子がしらを作りながら餅、そばを作り食べさせてくれるというのだからたまらない。
だがなかなか行くタイミングを失っていたが平成16年10月8日に訪問が実現した。
前に述べた通りに長井市の南で東側の最上川を渡り、切り通しを抜けると伊佐沢である。
直進すると久保の桜が右手に見えてくる。そのまま進むと十字路が現れる。
右に行くと南陽市、左に行くと大石へ(ここ大石も面白い所)。このまま直進するのだが
交差点近辺に看板が見えてくる。
ただし「餅や燻亭」になっているので「そば」の文字を探していくと見落として
しまうので注意が必要だ。
看板通りに行くといけるのだが実は道が狭く(南陽市側からの道は広い)ちょっと分かりにくい
と思うが、それが又探訪の楽しみでもある。
やがて次の写真の店が現れてくる。
玄関を見てみよう。なかなか風情のある面構えです。
この玄関の右側には巨大な獅子頭が鎮座しています。確か重さが250キロか300キロと書いて
あったと思います。
さてもう一度玄関の上を見上げてみましょう。
長押の部分には作成中の獅子がしらの木型がある。お客を歓迎してくれています。
店の中の様子です。全部本物です。二階は獅子がしら作成に関する資料室になっていますが
これがまた半端でないんです。貴重な資料がビッシリでした。
さて、メニューですが土地独特の豆を使ったずんだ餅(ここではじんだん餅となっている)が主で、
他に打ち立ての蕎麦か選べます。
この餅がうまかったですね。
なかなか工夫していることにこの両方を楽しめるメニューになっています。
次は盛り合わせ膳の様子です。十分に食べ応えがあります。
部屋の様子をちょっと見てみましょう。
天井もしっかりしています。
だんごの木が懐かしいですね。昔はみんなこのような光景がありました。
さて、この燻亭は開店して6年目ということでした。家は元々の古いものを使ったのですが相当に
しっかりした家です。
私の感想では、ここを管理している人が獅子頭作りに密着しているために、伝統を大切にする空気が
伝わってきます。これが良いのです。
よくある、旧家から急遽集めてきた民芸品を並べていかにも「田舎づくり」ですという雰囲気ではあり
ません。その点ここは田舎の雰囲気と地域の資料が豊富です。
事実、私はここの二階で、今コンクリート打ち込み中の長井ダムの上流にあるすばらしい渓谷に
ついての資料をここで見つけて感心しました。
とにかくゆっくりと出来る本物の館です。ぜひ全館くまなく探索してお楽しみ下さい。
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