世界一の騎馬像が山形市の霞城公園にある。
取材平成25年4月24日
山形市の中心部に最上義光(よしあき)の騎馬像が屹立しています。
霞城公園の正面にある大手門をくぐり抜けるとそこは広場になって
いますがすぐ目につくのが両足を高く掲げた馬に騎乗し西の方向に
突撃の号令をかけている勇壮な騎馬像です。重さは3トンです。
今にも動き出しそうな気がするすぐれた作品です。
この像は1600年に始まったもう一つの関ヶ原所謂「慶長出羽合戦」時
の合戦で西方の長谷堂近辺に陣取った上杉藩直江兼続の軍に対峙した
時のものです。
結局この時は石田三成が上方で挙兵したたための直江軍退却によりお
互いが直接に対決することがないままとなりました。
次は山形城の大手門周辺の光景です。
大手門をくぐり広場に入ると次の騎馬像が目に入ります。
さて、何がこの像の世界一なのでしょうか。
それはこの騎馬像が二本足で立っているところです。
世の中には多くの騎馬像がありますが完全な二本足で屹立している像はほとんど
無いのです。
大抵は後ろ足の傍に大きな岩を配置してそこに力を分散させている形態にしたり、
尻尾を地面につけさせ支えにしたり、灌木の塊の一部に像を支えている力点を隠し
ながら配置するものが殆どです。
ところがこの像は完全に二本足で立っているのです。
実はこの騎馬像が実現するまでは大変な隠れた逸話があるのです。
その辺を少し語っていきたいと思います。
この像の建立は潟fンロクの当時の社長の鈴木傳六さんがライフワークの一つとして
目論んだものです。何しろ固い意志を持って建立しようとするのですから彼の意志は
固いのです。その意志とはとにかく二本足で立っている人馬一体の像を作りたいとい
うことでした。
しかも製作期間がほとんど無かったのです。
昭和52年春に話があり、11月3日には除幕式をやりたいというものでした。
また、製作する請負会社は当然鋳物の町「銅町」の会社を使いたい。
そこで白羽の矢が立ったのが銅町の叶シ村工場でした。
ここは鋳物の鋳造部があり、ここには優秀な鋳物職人が多数おりました。
また、多くの人物の肖像ブロンズや立像、モニュメント等の制作をしていました。
従って作る下地は十分にありました。
しかし、いざ製作に入ってみるとやはり難しい所は二本足でどのように立たせるか
でした。
そこで山形市内の設計事務所に構造計算を依頼した結果は「立たない」でした。
施主は二本足が絶対だと言うし製作現場は大変困りました。
しかし、ここで銅町の鋳物職人魂が首を持ち上げました。
他人が駄目だと言うんなら俺たちがやって見せようぜという気運になりました。
職人の誇りと意地が強く彼らを包んだのです。
彼ら独自に構造計算をしたり、鉄骨の曲げや折り曲げる角度、材質の吟味、鋼材を
適所に張り付ける工夫等をしてついに完成に持って行ったのです。
その辺の骨組みの一部の構造を紹介してみます。
次の写真は骨組みに重量荷重をかけて試験をしているところです。
芯になる金属管も強い剛性を持つものを使いました。
何しろたったこれだけの管チューブであの全重量3トンを支えるのですから神経を
使ったことでしょう。
馬も一つの型で作ることは出来ないので多くのブロックに分けて製作し最後に一体に
張り合わせる方式をとりました。
いよいよ完成となり設置場所に運び込むための準備をしているところです。
昭和52年の制作当時の経費は3000万円でしたが現在なら1億円でも無理、第一
職人がいないとのこと。やはり日本では「ものづくり」は無理になったのでしょう。
さて、大変な苦労をした結果無事台座に取り付けることが出来た時は感無量の気持ちに
なるとともに銅町の鋳物職人としての誇りを感じることが出来たと当時の主担当の南氏は
私に語ってくれました。
最後に昭和52年11月3日の除幕式の様子を写真で紹介して終わりとします。
大変な盛況でした。騎馬像を一目見んと集まった人たちの熱気を感じます。
素晴らしい晴天の下、躍動感ある最上義光の騎馬像は素晴らしかったとのことでした。
さて、以上の説明でこの二本足で立つ最上義光の騎馬像が本当に世界的に見ても
素晴らしいものであることを理解していただいたことと思います。
今回の東北の大地震に於いてこの騎馬像はビクトモせずに立派に立っていました。
設計事務所が立たないよと判断したことに逆に奮発して作り上げた職人根性の見事
さがこの像には詰まっているのではないでしょうか。
残念なのはこの素晴らしい作品が山形市において関心を寄せる人はまれで、まして
世界的な作品なのだということを知らない人が殆どです。
今年は最上義光生誕400年祭なので山形市では多くのイベントが組まれているので
すがこの騎馬像に関するイベントや催し物は皆無です。
もったいない話です。
どうか本ホームページを読んで下さった方はぜひこの素晴らしさをPRしていただきたい
と思います。
戻る