「おくりびと」ロケ地探訪記 
    酒田・鶴岡地区編
 平成21年4月11日取材

    

 4月ともなると山形県内の各地も桜が次々と満開になっていく。ただ今年は庄内の
 酒田や鶴岡での桜の花見は大変な人出になることが予想される。
 それは第81回米国アカデミー賞を受賞した映画「おくりびと」のロケ地見学と重なる
 からである。
 そこで私はそのような混雑の前にロケ地を歩き取材しようと考え4月11日に出発した。
 この日は晴れて気温も高い日であった。桜はまだ満開にはほど遠い状況のためロケ地

 で最も人気のある旧割烹小幡のある酒田市日和山公園の駐車場に運良く割り込むこと
 が出来た。桜満開の時点ではまず駐車は不可能である。
 しかし、それでもロケ地はどこも人だかりであった。何しろ観光バスで集団で来られるの
 だから狭い空間はすぐに満員となる。それでも熱心に見学している姿には敬服する。
 まず最初の写真は旧割烹小幡である。平成11年位までは営業をしていたのだがある
 事情により営業をあきらめたのである。
 それは一つはもちろん建物全体の老朽化と経営不振ではあるけれど最も大きい理由は
 南側に建設されたマンションのせいであった。
 それまではこの料亭からは海が見え、花火大会の時などはここが特等席になったのだ
 そうだ。
 その座席確保には3年前から予約しなければならなかったとのことである。
 しかしすぐ目の前の南側に巨大な高層マンションが建設されこれらのことが全て無となり
 料亭経営の意欲を無くしたのが原因と地区の方は語ってくれた。
 現在はどこの料亭もその経営は大変なものになっているのは周知のとおりである。
 
玄関の様子を次の写真に示します。右側が料亭の入り口でした。
映画に使われたのは画面左側の部分で以前はレストランで社交ダンスなども行われた
そうです。



 旧割烹小幡の名残りを残しているのが次の写真の看板です。


 
就職口を探す大悟がこの建物に近づくシーンが次の写真でした。
現状をそのままにして使用したことが分かります。


さっそく中に入ってみましょう。左側に棺桶の見本がずらっと並んでいる光景は
ある意味で壮観でしたね。


 さてこのときに大悟が訪問することになった肝心の広告チラシは次のものでした。
 "安らかな"という文字が最初は無かったのでしたね。


社長を囲んで食べるシーンを撮った所が次の写真です。
三階にある社長の部屋ですがここで鳥肉をむしゃむしゃ食べるシーンが映画全体を
元気にしていました。この部屋からの眺めも良かったですよ。
ここで実際に食事をしたいなあと思いました。

現在の小幡は資料館の役目も果たしていていろいろの撮影で使われた小道具も
展示されていました。その中で特に私の関心を引いたものが次の写真でした。
そうです。鮭の模型です。実はこの模型にはいろいろ仕掛けが施されていて一種のリモコンで
動くのだそうです。
私も映画をみていて鮭が産卵のために懸命に川を遡上する姿に感動をするとともに
よくもタイミング良く鮭の遡上のシーンを撮ったものだと感心していたのですが実はスタッフに
よるリモコンを絡めた一種の演技であったのです。
それにしてもこの鮭君の演技は見事でした。


さて、これら「おくりびと」に関する資料はここだけではなく庄内空港内の展示場でも行われ
ています。それらの資料には映画を作る上で使われる詳細な貴重な資料が多数あります。
次はその一つでセットで使われる部屋の配置や構成を緻密に指定しているコンテ図です。
映画では全てがこのようなコンテ図で指定されます。演技している役者の姿までコンテで
表現されます。あの黒沢明監督のコンテ図は有名でした。



次はスタッフの行動表です。このような行動表で全スタッフが一糸乱れず動いていく
わけです。



次はアカデミーのオスカー像のレプリカとフィルム枠です。共に金色で素敵でした。


さて、次は鶴岡市に移動します。ここでも多くのシーンが撮影されましたが今回は
印象的な銭湯風呂の「鶴の湯」を紹介します。

場所は鶴岡銀座街の中の横町にありました。私が行ったときはのれんは下がって
いたのですが営業しているようには見えませんでした。
煙突も私のイメージとは異なり近代的な煙突になっていました。けれども雰囲気は
満点でした。

ちなみに次に映画でのシーンをお見せします。窓を照らしている白熱電球による
あたたかな色がなんとも言えない雰囲気を作っています。

映画づくりとは単なる外形を作ることではなくその中に心を作っていくことであり、それが
出来ない繊細さを持っていない人間には映画は作れないと思うし作って欲しくない。


最後に映画撮影の場でスタートで使ったカチンコを紹介します。
はい、スタート カチン!


さて、以上のように駆け足で酒田、鶴岡地区でのロケ地を紹介しました。
まだまだ沢山ロケ地はありますが今回はこの位にさせていただきます。
現在はどこに行っても詳細な案内図が用意されています。ぜひ皆さん当地に
きていただき改めて映画「おくりびと」の思いを強くして欲しいと思います。


 戻る