大蔵鉱山を訪ねる      平成16年7月31日

  今、山形県大蔵村肘折温泉に行くと避暑と疲れを癒すために全国から大勢の人が
 集まっている様子にぶつかります。幸せな様子にこちらの心も和みます。
  肘折温泉は深い火山カルデラの底に位置していることは温泉に入る手前の高台から
 下を眺めると良く分かります。
  温泉の周囲は高い山に囲まれておりここが火山の噴火口の底であることは明白です。
  このような地形から、別項で掲示しているように岩体発電所が試験的に設置されたのです

  とにかくここの地下にはマグマが存在しているのです。
  このような地形には各種の鉱石が多く含まれているために多くの鉱山が開発されました。

  肘折温泉には大蔵鉱山が存在しました。もう少し南の月山と葉山の間には永松鉱山や見立鉱山、
 幸生鉱山等が散在しており鉱山で働く多くの人で賑わっていたのです。
  むしろ昔は山は賑やかだったのです。

  大蔵鉱山は温泉の西2キロの地点にあります。温泉からは近いので私は簡単に見つかるだろうと
 出かけたのですが藪漕ぎに近い状態に草木が生い茂っており見つけるのに苦労しました。
  さて、当鉱山は金、銀、銅、鉛、亜鉛、硫化鉄鉱が算出したと記録にあります。
  発見されたのは明和元年とありますが西暦でいつになりますかね。
  大正8年までに金125キロ、銅5896トン、銀1192キロが産出したとのことです。
  大正9年に一時閉山する時点で従業員は3000名を越えていたそうですから賑やかだったでしょう。
  昭和20年にふたたび閉山となりました。
  昭和27年に東邦亜鉛が採鉱再開しましたが昭和35年に完全閉山となっており現在に至っております。

  これからのレポートは私が平成16年7月31日に探訪した時のものです。
  

   温泉を月山側に抜け出て森林帯に入り、そこから抜け出すとそこが次の写真の場所となります。
   この場所がなかなか分からずウロウロしました。
夏のアツーイ日でした
   後で知ったのですがこの正面の山の5キロ向こう側があの有名な秘湯今神温泉なのでした。
  
 
  正面の森に入るとやがてつぎのような藪道になります。
 

 絶対に半ズボンは無理です。この藪を進むと突然に鉱滓の山が出てきました。
 あっ、ここだなと直感しました。一安心です(というのは温泉で道を聞いたとき 
 熊が出るよ と言われていたのです。早く着きたいとの気持ちが一杯だったのです)


 

 丁度映画「ネバーエンディングストーリー」に出てくる岩の怪人のイメージが浮かびました。
 ここに鉱滓があるということは溶解炉等はこの上にあることになりますから、山を見渡し
 大体の見当をつけて登っていきます。この辺が未知物体探しの楽しい瞬間です。
  
 突然陥没穴が出てきます。結構深く落ちたら足をくじきそうです。慎重に進みます。

 

やがて目の前に森の中から溶鉱炉の煙突が現れてきました。丁度横溝正史の小説「三首塔」の
中で主人公が三首塔にたどり着いた時の光景が頭に浮かびました。
誰もいない世界に突然このようなものが現れてくると結構ぞっとしますよ。



炉の前の広場には建物の基礎だけが残っておりました。

 壁は頑丈な煉瓦造りで今もきちんと残っております。


さて、今回は案内人も連れずの単独行ですので私が行動できる範囲はここまででした。
おそらくこれ以外にも多くの遺跡が残っているのだと思いますが今回は先にいくことを断念しました。
午後2時を過ぎており家に4時まではどうしても帰らねばならない。高速使えば何とか帰れるかな
という時間ですのでここで戻ることとしました。
帰りに振り返ってみると鉱山のボタ山の痕跡が次の写真のように見えました。中央の部分で
台形状になっているところがそうです。




ここで昔3000人以上の人が働いていたのかと考えると感無量の心境になります。

 さて、本論はここからです。
 私は県外のこのような鉱山跡地を数多く見てきました。
 県外の地はどこも見事に鉱山施設を残して活用して再生し、再活動しています。
 秋田県の尾去沢鉱山、小坂銅山、宮城県の鶯沢鉱山、新潟県の鳴海金山
 等多くが立派に再出発しているのです。
 それに比べて山形県は何も残っていない。これは何なのか、怒りを覚えます。
 結局山形県は資源掘り出しの場所貸しだったのですね。利用が終わればはいさようなら
となり後には何も残らない。まったく悲しいです。最も悲しいのはその地で働きに働いた人たち
であるはずです。その方たちに何も残せなかったのです。
 お願いですのでこれからは壊さず、残し活用する方向で考えてください。
 心配なのは奥羽線板谷、大沢の巨大スノーシェッドの行く末です。
 早くも撤去の声が出ているのですが何とか残しましょう。
 何も無くなれば山形県民が笑われるのですよ。

多くの心残りを感じながら肘折温泉を後にしました。



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