筋部落の現状
山形県は人の顔に似ている。その顔の部分で言えば顎の辺りになるであろうか、
南陽市萩という山間の部落がある。
ここは相当の山間の地であるが、ここから更に東の山間に入る一筋の道の奥に
筋部落という集落がある。
私が昭和40年代に訪れたときは20軒ほどの集落であった。
とても和やかな感じの集落で一人一人が生き生きと生活を楽しんでいた感じであった。
ところが近年はその面影は無くなり、廃墟に近い状態となっている。
わずか5軒ほどが細々と残り、かつて存在した家々は無惨な廃墟となりはてている。
私が常に主張している、「山間は昔の方が豊かであった。今は崩壊している」という
主張を証明している地となっている。
今回、平成18年4月30日にこのホームページに載せるために再訪をした。
その経過をここに報告する。
まず南陽市萩の地を通っている主要地方道山形南陽線から筋部落への道を
見てみよう。
写真の道をひたすら東に登っていくことになる。
やがて道の左側には(右側は川になっていて家は存在できない)廃墟が次々と現れてくる。
みなここには以前は人が住み、家畜が飼われ、犬が吠えている光景が当たり前のことだったのに
と暗澹たる気持ちになる。
現在の部落の様子を上から見下ろしてみよう。
さて、筋部落の現状がお分かりになったことと思う。
では、この部落は何を由来として存在したのであろうか。
実はここは南沢鉱山が操業していた地である。
ここの北部には有名な吉野鉱山があった。
この辺は至る所鉱山が存在し、多くの人が働いていた所なのである。
南沢鉱山の鉱種は金、銀,銅、亜鉛鉱が主であったが昭和47年に放棄されている。
さて、筋部落の家の裏道を辿ると次のようなパイプが敷かれているのが見える。
これは何なのだろうか。実はこのパイプが現在の筋部落の存在意義を象徴するのである。
このパイプを山の上の方に辿って行ってみることにします。
細い車一台がやっとのあぜ道を登っていくとやがて建物がみえてきました。
これは結構大きな施設である。こんな山間の地で何をさせているのでしょうか。
さてこれは何なのであろうか。実はこの施設の紹介が今回の訪問の大きな
狙いなのである。
裏手は傾斜地となっている。
ここを更に上に登っていくと次のような巨大なプールが現れる。
水は無く、赤さびいろの土で覆われている。
そうです。ここは鉱毒水を沈殿させる沈殿槽なのです。
鉱山は閉鎖されても坑道からは鉱物の成分を含んだ水が湧出しています。
このような鉱毒水をこの沈殿槽でため込み濾過して中和作用を施し、
真水にして戻す処理をしている所なのです。
ここで濾過された水を処理する槽は次の写真ですがきれいな水になっているのが分かることと思います。
そしてここからの水が先ほどのパイプで下流の最終処理場まで導水されているのです。
ここ吉野鉱山関連の当地にはこの他に沢山の処理場があり、日夜稼働しています。
おそらく現在の筋部落の関係者はこのような処理場の管理を担当しているものと思われます。
鉱山で栄え、今又鉱山の後処理で生きる。なんとも寂しい限りですがこのような地が、
かつての日本の繁栄の基礎となったことを我々はけして忘れてはなりません。
そのような意味からも、むしろこのような処理施設は積極的に県民に公開した方が良いのに
と思います。
ひっそりと隠れた存在になっていれば昔日本には多くの鉱山が存在したことなど若者に
忘れ去られてしまいます。
当ホームページをご覧になった皆様にはぜひ、このような山間の地のかつて果たしてくれた
意義を深く理解していただきたいと願います。
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