地方製造業の存立はピンチに

 平成26年3月9日の地元新聞の山形新聞にUターンに関する記事が掲載されていた。
 県内進学高校2校で行った調査結果であった。
 これによると首都圏の大学に進学した若者の25〜30%しか地元山形県内に戻らない
 という結果だった。
 だが、このことは我々が10年以上も前にこうならないように対策が必要と訴えてきた
 ことが明確になっただけで驚くことではない。
 現在山形県は年間約一万人の人口減少となっているがこのUターン者が少ないこと
 がその一因にもなっている。とにかく都会に行った若者は地元には戻らないということ
 である。
 教育界はせっせと他県のために教育をしていることになる。
 このことも県議会で問題化されたことが何度かある。
 高校、大学の教育者はこのことを真剣に考える必要がある。
 しかし、これは高校、大学側だけの責任ではない。
 若者が戻って就職出来る職場がないことが原因なのだから行政全体の課題である。




 さて一方海外の製造業の実態を見ると、例として携帯電話やスマホの製造の場合大変な
 激戦である。10年前までは世界のトップを走っていたノキアやモトローラは脱落して今や
 台湾、中国が製造面での主役になっている。
  だが依然として日本が製造業界で先頭グループにいるのだと思い込んでいる人が多い。
  今に何とかなる、あせるなと私に言った県職員がいた。
  どのくらい真剣に考えているのか疑問である。
 ちなみにアイホーンの主力工場になっている台湾の鴻界(ホンハイ)社を見てみると工場
 は中国にある。鄭州と深?にある工場は新規採用者数が20万人である。全従業員数は
 何と46万人というから驚く。日本のちょっとした市全体の市民数と同じになってしまう。
 そしてこれくらいの人材を抱えて一銭、一円のコストダウンと戦っているのだから日本は
 とてもとてもかなわない。
 
  一方日本の場合、製造業にいく若者の数は激減である。大学の工学部に入った人間で
 卒業後に製造現場を望むものはほとんどいなくて全て、総務、管理、企画、設計等の間接
 部門志向が多い。工学部志向も薄く、金融関係希望者が増である。
 製造の現場に行こうなどという学生はほんの少しである。
 したがって日本で工場を大規模に作ろうと思っても人材が集まらない。
 更に大学教育も実習時間が少なく、その結果、機械科出身でも旋盤をいじれない学生が
 どんどん増えている。
  この現状を見ると地方で大規模な工場を作り、製品を大量に作り出すことは不可能となっ
 た。ただこれは結果として"なった"ということで今までにこうならないようにする歯止めの
 機会はあったのだ。
 「Japan As NO1」として世界にもてはやされたころに実は滅びの種がまかれたのだ。
 あの頃、私も工業力強化の施策を案として提示したが、上から「これからは文化する行政」
 にしていくということで案はつぶされた。当時の世の中は製造業ような分野を汚いイメージ
 として毛嫌いし、芸術・文化を必要以上にとりあげる風潮であったがあそこあたりがターニ
 ングポイントだったと思っている。豊かになれたのは製造業のお蔭だということはスッパリ
 忘れていたのが日本人だった。中国、韓国の国民はそれをじっと横目で見ていたのに。
 
  さて、これからどうするかだ。
 幸いにも地方の小企業は元気である。毎日安い単価の下でではあるが懸命に闘っている。
 特に戦力になっているのは地元の工業高校卒である。
 彼らは実践的技能を持っているので機械を自由に扱える。研究にも熱心である。
 これらの人材と共に地方の小企業は自分独自の技術を武器に何とか生きている。
 このような企業が地元の若者を雇用して彼らを地域の原動力にさせている。
 もう一度、日本人は工業力の強化に目を向け、世界に一つの技術を生み出して強力な
 製造業を中心に地方を生き生きさせていくことが急務なのではないだろうか。
  だって多くの人材を採用し、世界からお金を持ってこれるのは製造業である。
 エネルギーの石油・ガスは輸入にたよらざるを得ず、このままでは外貨はどんどん減り
 昭和30年ころのように外国にも行けなくなり、外国から好きなものも買えない時代にも
 どってしまう。ああはなりたくない。
 今が日本の正念場だと思うのだがいかがでしょうか。

 
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