蕎麦屋「山せみ」と柳川温泉・神通峡
                                       平成21年2月12日

 当ホームページ内で大江町柳川温泉について述べた項があります。
 本稿ではこの柳川温泉に向かう街道の途中にある自然豊かな蕎麦屋「やませみ」を
 紹介します。
 「やませみ」はカワセミの仲間で、山中の綺麗な渓流に生息しています。
 川魚一匹をぺろりと飲み込む位ですから旺盛な食欲を持っています。
 そのような鳥の名前を店名にしたこの店はやはり自然の中のさわやかさを持った
 すっきりした店です。
 ここから更に奥の柳川温泉への行き帰りの途中に寄れば本当に心がさわやかに
 なります。
 今回は冬真っ最中の2月に訪れてみました。
 今年は例年になく2月であるにも拘わらず雪が少なかったので出かける気になりま
 したが例年ならとても出かける気にはならない厳しい自然の中にあります。
 しかもここ柳川地区は平成20年12月25日に東北初の女性知事になった吉村美栄子さん
 の生まれ故郷なのです。
 このようなこともあり私がこの真冬に柳川に行ってみようという気になったわけです。
 なおこの店までの街道の様子は別稿の「大江町柳川温泉」を読んでいただきたいと思い
 ます。
 大江町の中心から柳川温泉までの道は前半は平坦なアスファルト道ですが、大江町
 貫見(ぬくみ)という所あたりから徐々に山道らしくなってくるのですがその貫見の部落に
 この「山せみ」の店があります。まだ雪の中です。
 この辺から徐々に道は険しくなりますからこのあたりで食事をとりゆっくりと出発すると
 良いと思います。

次が店全体の写真です。

店の中の様子です。

奥に座敷があります。

次が蕎麦の写真です。細すぎない中細で冷たい水できりりとしめられた堅めの田舎そば。
実際の色はもう少し黒っぽいです。

さて、ここからが本論です。ここまでは単なるそば屋の紹介にすぎません。
私は何時も店の人と語り合いますがこの日も何気なく女将さんと会話を始めました。
「壁に昔あったという柳川鉄道の写真があるが誰か寄贈したのですか」と。
すると女将が「そうです。ただし写っているのは私」と聞いてびっくりをしたのです。
というのは昔、柳川から朝日岳の登り口の古寺までをつなぐ森林鉄道があったのです。
写真にあるとおり昭和39年に廃止されました。
私の高校時代は山岳部の連中からよくこの鉄道の話を聞いて知っていたのですが
とうとう乗る機会はありませんでした。ですから尚更この鉄道の写真を見てびっくりしたのです。
しかしよくもまあ鮮明な写真が残っていたものです。

次の写真は機関車を付けないまま惰性で走っている光景です。
普段は人を乗せることはなくもっぱら切り出した材木を下に運ぶための森林軌道だった
のです。
しかし、この上にある古寺には部落があり児童生徒もおりました。
部落の人が左沢や山形に来るとすればこの軌道を利用するしか方法がなかったため
自然発生的に時には人間も乗る森林鉄道に変身したのです。

いろいろ荷物を沢山積んでいよいよ出発なのでしょう。ここは古寺でしょう。
人たちの会話や歓声が聞こえてきそうです。いい写真です。

登る時には機関車が付きました。よく見かける森林軌道で使われた機関車ですね。
乗客は傘をさして荷物ボックスに乗るわけです。

次の写真は本来の切り出した木材を運んでいる光景です。ずいぶん太い木材を運んだの
ですね。

沢山の荷物を積み込み全員が盛装して下山の喜び一杯のいきいきした表情を写した
本当に良い写真です。この写真を撮った人は前もって先に走っていって来るのを待って
撮ったのでしょうね。撮り終わると又走って飛び乗ったのでしょう。
その様子が見える気がします。

さあ次の写真が問題の写真です。機関車から降りてくるこのいきいきした若い女性が
この「山せみ」の女将だったのです。下の柳川に家があったが学校ははるか山の上の
古寺にしかなかったのでこのようにして家に帰るのが楽しみだったそうです。
ただ古寺は山形でも名だたる豪雪地帯ですから当然冬は寄宿舎に全員泊まり込み
厳しい冬を越したのだそうです。

この森林鉄道は現在はすでに無くなっていますが、この軌道の跡地として残っているのが
古寺から柳川まで流れている渓谷「神通峡」の遊歩道なのです。
この神通峡は黒部渓谷を短くしたような形態ですが谷の険しさと激流の強さはひけをとりま
せん。
そして全経路が谷間のため昼でも薄暗く、道幅は狭く下を覗けば激流が渦を巻いていると
いう一人ではとても歩く気持ちになれない場所です。
このような場所を昔軌道列車が走っていたなど現在の現地に立てばとても想像できません。
この写真に写っている場所は傾斜が緩やかで幅もある場所が多いのでおそらく大部分は
出発点の古寺か終点近くの柳川部落の入り口近辺だろうと思います。
なぜなら神通峡のあの険しい道ではとても撮影は出来なかったはずですから。

皆さんも山形県大江町柳川温泉に行かれるときは是非ここで蕎麦を食べていただきこの
森林鉄道のことで女将さんと会話をしてくれたならきっと店の人は喜ぶと思います。
なお、柳川温泉行の方は別項目で紹介してありますのでそちらをご覧下さい。

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