山の自然を守るために



 鳥海山のイヌワシ保護について

鳥海南麓のイヌワシの巣立ち(2002年6月)



 大手資本の八幡鳥海山スキー場計画を白紙撤回させるほどの大きな力となった鳥海山に生息する「イヌワシ」とはどのような鳥なのでしょうか。


分 布
 日本では主に本州の東北、中部、中国地方の日本海側を中心に分布しており、北海道、四国、九州では局所的にしかいない。日本イヌワシ研究会による1995年調査時点では全国で134つがい(ペア)で全体でおよそ300羽程度が確認されている。未調査地域を考慮しても500羽弱ほどしか生息していない状況で個体数は更に減少していると考えられている。 また山形県内では11つがいが確認され、その中の4つがいが鳥海山で確認されている。
 また環境省により1997年に公表されたレッドデータブックでは絶滅危惧TB類(TA類に次ぐ、近い将来における絶滅の危険性が高い種)に登録されており、日本最大級の猛禽ですが人間の手による自然開発行為などによって生息地を追われ個体数は確実に減ってきています。


生 態
 猛々しい鳥で大型肉食の鳥で生態系ではその頂点に君臨しており、翼をひろげたときの大きさは2mほどにもなる。高度を飛んでいるので小さく見えるが、近くを飛ばれると空が暗くなったように感じられるというほどの大きさとか。
 上空から獲物を狙うために高山帯の低灌木しか生育しない所や草原などを採餌場として、巣は切り立った岩壁の岩だな等につくられる。 餌はノウサギ.ヤマドリ.ヘビの3種が主要な餌で、1つがいの行動圏は平均で60平方キロメートルという。繁殖については巣立ちまでいったペア数の繁殖成功率は年々下がってきており1981年頃は50%以上だったのが1990年頃には40%、更にそれ以降低下し1997年にはついに17%まで落ち込んでしまった。巣立った雛数ではなんと全国で年間20羽程度しか確認されていないことになる。

 山形県内に生息する11つがいも1999年には1羽のみの幼鳥を確認しただけとか。鳥海山の南麓に生息するペアは2001年度は巣材や野ウサギの搬入との情報もあったものの繁殖確認には至っておりませんでした。それでも秋頃から頻繁に一緒に飛翔するペアが確認され求愛行動も見られたとのことで、うまくいけば2月頃には産卵、3月下旬以降にふ化、6月下旬頃には幼鳥の巣立ちが見られると良いのですが…


  平成16年8月31日 環境省報道発表資料より (全文転載)
希少猛禽類調査(イヌワシ・クマタカ)の結果について
概要 
 平成9年度から、環境省、経済産業省、国土交通省が実施(林野庁協力)した希少猛禽類調査(イヌワシ・クマタカ)の取りまとめが終了しましたので、結果の概要をお知らせします。
1.調査の概要
 イヌワシ及びクマタカについて、分布及び生態等の知見の集積を図ることを目的として、平成9年度以降、[1]既存資料調査、[2]分布に関する現地調査、[3]生態に関する現地調査、[4]生息環境調査(植生調査)、[5]イヌワシ・クマタカの生息状況に詳しい有識者等へのアンケート調査を実施した。
 本調査により、調査実施以前には不足していたイヌワシ・クマタカに関する生息分布、個体数、生態等に関する新たな知見の収集が図られた。
2.結果概要
(1)生息分布について
 既存資料調査、現地調査及びアンケート調査により、イヌワシでは全国で635メッシュ(10km×10km)、クマタカでは全国で1,402メッシュ(10km×10km)において生息が確認された(別紙1・2参照)。生息が確認されていないメッシュには、まだ調査が行われていないメッシュが含まれているため、今後の調査の進展によって、新たな生息が確認される可能性がある。
 なお、イヌワシ生息分布図は、これまでにも作成されているが、実際に生息が確認された地点だけでなく、アンケート調査等により生息が推定される地点の外周を線で囲んだものであった。今回の生息分布図は、実際に生息が確認された地点または生息の可能性が高い地点を10kmメッシュにプロットしたものであり、より正確で詳細な情報となっている。
(2)個体数について
 イヌワシでは、既存資料調査、現地調査及びアンケート調査より、最低でも約200ペアが確認されたことから、全国での最小推定個体数は、200ペア×2羽=約400羽となっている。
 全国でのイヌワシの推定個体数は、以下の式で求められる。
 (推定個体数)=(ペアとなっている個体の数)÷(1−(単独個体の割合))
 アンケート調査からさらに約60ペアの生息が推定されており、海外の文献よりペアを形成していない単独個体(幼鳥や若鳥を含む。)の個体数を全個体数の20%と仮定すると、全国での推定個体数は、(200ペア+60ペア)×2羽÷(1−0.2)=約650羽と推測される。
 クマタカでは、既存資料調査、現地調査及びアンケート調査より、最低でも約900ペアが確認されたことから、全国での最小推定個体数は、900ペア×2羽=約1,800羽となっている。
 全国でのクマタカの個体数の推定については、クマタカはイヌワシと比べて分布域が広く、精度の高い推定を行い得る基礎的な分布データが十分に集積されているとはいえないため、今回は行っていない。
 今回の個体数の推定値が、これまでの推定値(イヌワシでは400〜500羽、クマタカでは900〜1000羽)より大きくなっているが、これは、以前より調査が進展し、今まで調査が実施されていなかった地域で新たな生息が確認されたためであり、両種の個体数が増加しているということではない。
 イヌワシ・クマタカの繁殖成功率は全国的に低下傾向にあるため、将来における個体数の急激な減少が危惧されている。
(3)その他(生態等について)
3.今後の対応
 環境省では、現在、イヌワシ・クマタカについて、「希少猛禽類保護指針策定調査」を実施しており、基礎的な生息分布や生態等の知見の集積だけでなく、生息環境の整備方法等、積極的な保護を図るための調査を実施しているところであり、これらの調査結果も踏まえ、今後の希少猛禽類保護施策を進めることとしている。
日本におけるイヌワシの生息分布(環境省報道発表添付資料より)
日本におけるクマタカの生息分布(環境省報道発表添付資料より)
 上記の希少猛禽類調査(イヌワシ・クマタカ)報告書は、平成16年8月31日に発表された「環境省報道発表資料」の全文を転載しております。関連資料などは、環境省のホームページのトップページの「自然環境・自然公園」より入るとご覧いただけます。
このコーナーには自然公園・野生生物・鳥獣保護など興味深い記載・報告書などがたくさんアップされておりますので、ぜひともお立ち寄り下さい。



 鳥海山南麓のスキー場開発計画以降のイヌワシ保護の取り組みを紹介します。
   鳥海山ワシタカ研究会
 スキー場開発計画が持ち上がった際に、(社)日本山岳会自然保護委員会が行ったイヌワシの学術調査の際の組織と調査データを継承するために1997年に発足しました。同年9月に岩盤ごと崩落した繁殖巣を秋田県田沢湖町の先例を参考にして、36mもの高さの岩場に「人工巣棚」を設置するなど行っています。2000年の春には先の人工巣棚の設置作業の経緯や、イヌワシ研究の第一人者で現在環境省「猛禽類保護センター」保護増殖専門官、関山房兵氏の講演記録など64ページの「鳥海山南麓のイヌワシ」という活動報告書を発行しています。
   環境省「猛禽類保護センター」
 環境省による、全国初の猛禽類保護センターが2000年9月に八幡町湯の台地区「イヌワシ高原」(鳥海高原家族旅行村)に造られました。絶滅のおそれのある希少猛禽類であるイヌワシやクマタカなどの調査研究、保護活動などの拠点施設で、生態の保護についての理解や関心を深めていく啓蒙活動を総合的に行っています。野生生物保護施設では全国で8カ所目、猛禽類研究では初の施設となります。猛禽類のはく製の展示や、映像や写真パネルなどもあり、ぜひとも鳥海山湯の台口を訪れた際には寄ってみてはいかがですか。
イヌワシのはく製を間近に見ると、その大きさにビックリしますよ!
毎週火曜日が休館で9:00より16:30まで開館しています。
   八幡町
 大手開発企業コクドの八幡鳥海山スキー場が白紙撤回された後、スキー場による振興策を失う事態になり立ち止まった八幡町は、発想を180度転換して開発から「自然環境保護とイヌワシとの共存」で振興を図るとの判断をおこなった。1997年12月にはイヌワシを「町の鳥」に制定し、イヌワシTシャツ、イヌワシシールなどを作成販売し、自然環境保護基金を創設し寄付するという。2000年5月には「全国野鳥保護のつどい」の開催、9月には「猛禽類保護センター」の誘致なども行いました。
 後藤町長曰く「ずっと東京と比べてあれこれ無い物ねだりしていた。イヌワシに言われて後ろを向いたら鳥海山があった」  今後もスキー場ばかりに固執せずに足元の自然を地域振興の核に据えることを考えるならば、これこそまさに「イヌワシが教えた町づくり」(日本経済新聞99.10.11)といえる。

日本経済新聞 99.10.11
「イヌワシが教えた町づくり」

   鳥海山の自然を守る会
 スキー場開発計画の白紙撤回を勝ち取っても、なお東北電力による超高圧送電線「出羽幹線」のルート上にイヌワシの高利用域があることへの問題提起など、息つく暇無なくいろいろな問題が派生している。
1994年以降でも「イヌワシ VS. 公共事業」の紛争が全国で16件程おきているという現実もあり、今後は「開発阻止運動」から「自然保護の啓蒙運動」へと転換をはかりながら運動を進めたい。「自然観察会」を主活動に鳥海山の動植物の重要性や保護の必要性を多くの人に訴えていきたい。

 イヌワシの繁殖期である春先に、緩やかな鳥海山の斜面を良いことにして「スノーモービル」を高利用域周辺に乗り入れて騒音をまき散らす行為などにも監視を強めていかなければなりません。

 八幡町南麓開発スキー場計画へ戻る



 イヌワシについての関連LINK
日本イヌワシ研究会 全国規模での保護生息調査、情報提供を行う民間研究者の組織
(財)日本自然保護協会 各地の現実の環境問題に取り組み、会費や寄付で運営する民間組織
東北自然ネット 東北各地の自然を守る活動についての情報、交流の発信を行っています
環境省猛禽類保護センター 鳥海山の麓で希少猛禽類の調査研究、保護の啓蒙活動を行う拠点施設
環境省生物多様性センター 多様な生物の保全と維持の拠点施設でレッドデータブックの詳細あり
環境省ホームページ 上記2施設やインターネット自然研究所など環境全般の情報が豊富
八幡町のイヌワシ関係情報 鳥海山の麓でイヌワシを「町の鳥」に制定し、地域振興の柱にしています
The Word of Zoology 世界各地の動物に会えますし、またイヌワシのいる動物園も分かります
The Cyber Zoo 子供のためにひらがな記載で、イヌワシの鳴き声も聞けます
(財)日本野鳥の会 日本各地の野鳥を愛しその自然環境を守る活動を行う民間団体
日本野鳥の会山形県支部 山形県内で見かけるいろいろな鳥や各地の探鳥会の案内など
(財)日本鳥類保護連盟 野生鳥獣に関する科学的知識と保護の精神普及を目的とする
毎日新聞社 毎日の視点→自然保護→鳥海山スキー場 詳しい特集記事があります
碓氷のイヌワシを守る会 群馬県の裏妙義のイヌワシがサーキット場建設計画で危険な状態


イヌワシに関しての参考書籍
猛禽類保護のすすめ方 環境庁自然保護局野生生物課編  (財)日本鳥類保護連盟発行
鳥海山南麓のイヌワシ 鳥海山ワシタカ研究会 2000年2月15日発行


 何度かイヌワシらしい?姿を見て写真にはあるのですが、あまりの遠方からの撮影のため「トビ」のようにも見えるし止めときました。いろんなLINKでその雄姿をご覧下さい。


自然 四季 スキー 話題 LINK 掲示板