山の自然を守るため



3. 秋田県祓川 北東斜面スキー場計画
     ゴンドラ 全長2,700m



 鳥海山の北東斜面。矢島口からの登山道は夏でもかなりの残雪が残る。あの長大な雪渓は春.夏スキーを楽しむ山スキー愛好家を全国から集めるメッカともなっている。ところがあの斜面を国際大会も開催可能という「アルペンA級公認コース」などと指定してスキー選手の強化に使いたいから「ゴンドラを設置して開発を要請」した人たちがいた。
 大雪渓の山頂直下までゴンドラを架けて、下部の麓一帯のブナ林なども伐採して関連施設を造ろうなど乱暴な発想をしたのはいったい誰だったのか…


1977(S52) 全日本スキー連盟と秋田スキー連盟がゴンドラの設置を含む開発要請を矢島町に要請する。目的はスキー選手の強化だった。
1978(S53) 2月、矢島登山ルートが「アルペンA級公認コース」に指定される。
5月、矢島町および町議会全員一致で県企業局に施設設置を陳情。
6月、全日本サマーアルペンスキー選手権大会が大雪渓で開かれる。
大会期間中に融雪防止剤として大量の塩化カリウム等の薬剤が散布されたことが報じられ、高山植物や渓流魚への影響が心配され抗議の声がわき起こる。
10月、県企業局、矢島町、鳥海村、県体協による「鳥海山北東斜面開発連絡懇談会」が発足。内密な現地調査のもとでのゴンドラ設置構想が具体化する。
12月、秋田県山岳連盟は自然保護、安全登山の立場から反対を決議する。秋田県山岳連盟は加盟50団体。
1979(S54) 1月、秋田県に「鳥海山の自然を守る会」結成準備会が発足する。同時に山形県の自然保護団体に支援を要請し、お互いに反対運動を確認。



        北東斜面スキー場計画の概要と問題点
 1. 索道(ゴンドラ)
  矢島口5合目の祓川下の野営場付近(標高1150m)から8合目七ツ釜.氷の薬師の中間点(標高1740m)まで全長2700mのゴンドラを架け、支柱は25本。1時間に900人の乗客を輸送し、6時間稼働で実に1日5000人以上の人が標高1700m以上の山に登る計算となる。
 2. 道路
  ブナ谷地から祓川まで8.6kmの道路を勾配、曲線、拡幅の改良工事を行う為に付近一帯のブナ原生林を伐採する。
 3. 付帯施設
  祓川駐車場の大幅拡充、また索道停車場、カプセル収納庫、トイレ、休憩所などの関連施設整備により、雪田湿原.灌木帯がつぶされることになる。
 鳥海山の1700m以上までの大雪渓に多くのスキーヤー、観光客が足を踏み入れたら自然にどのような影響があるでしょうか。高山植物の踏みつぶし、ゴミの投棄、し尿処理などの問題、またスキー場の薬剤散布などにより高山植物、渓流魚は姿を消してしまうでしょう。 
 また、スキー客の安全面を考えると相当数の遭難事故の発生が予想されます。春先でも低気圧通過後の気候はまるで真冬なみの山になる事や、普段でも雪渓一帯にガスがかかると迷いやすくなるなど北東斜面の難しい地形や急激な気象変化など鳥海山の自然の大きさと厳しさを解った上での開発構想なのか疑問になってくる。
建設予定地は国定公園地域ですので昭和47年には山形、秋田両県にて結んだ
  「標高1200メートル以上は無車道(含建造物)とし開発を規制する」
という”紳士協定”による規制に反している。もう一つ大きな問題として、じつはゴンドラ計画の最終点側700mは山形県の領域であり、秋田県側が無断で測量し越境してルート線引きを行っていたのだ。矢島口の七ツ釜までは秋田県だがそれより上の氷の薬師は山形県側なのである。



1979(S54) 2月、秋田県側代表と山形県側自然保護団体が酒田市で懇談。両県で共同して鳥海山乱開発を阻止することで合意する。
3月、鳥海山の自然を守る会など自然保護8団体が山形県板垣知事に対し「ゴンドラ設置計画の不許可」を文書にて要請する。
山形県議会において「秋田県側の鳥海山観光開発問題」の質問がある。これに対し県環境保健部長は「鳥海国定公園内でのスキー場建設は両県の協定で標高1200m以下となっており、この基本的な考えは変えない」という意向を示す。
4月、秋田県にも「鳥海山の自然を守る会」が結成され更に反対運動が秋田、山形両県で連帯して広がっていった。


                    


 秋田、山形両県の鳥海山の自然を守る会を先頭にした広範な反対運動と協力議員との連携した鳥海山北東斜面スキー場計画反対の運動は、県議会厚生常任委員会の場で県担当課による

    「秋田県側から正式に申請があっても山形県は許可しない方針」

との意向を引き出した。これ以来、「鳥海山における標高1200m」の持つ意義は開発と自然保護との問題で鳥海山にかかわる秋田、山形両県においては大きな歯止めともなっていった。こうして北東斜面スキー場計画の開発構想は中止に追い込まれていった。
そしてこの秋田県側斜面のスキー場反対運動は、その10年後に表面化する山形県側斜面である八幡町鳥海南麓スキー場計画(国土計画、現在はコクド)へと受け継がれていく。



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