照りつける夏の日射し
降り注ぐ強い日射しの中
足早に目的地に向かうその身体に
ひんやりとした冷気を感じる
微かに感じる水の気配
涼しさに引き寄せられる様に足を踏み出す
気が付けば、深い霧の中に居た

肌に感じるひんやりとした空気
立ちこめていた霧がゆっくりと晴れていく
肌に触れる固い木の幹
晴れた視界に浮かぶのは、深く覆い茂った木々
いつのまにか踏み込んで居たのは、森の中を続く一本の道
静けさに満ちた不思議な空間
前方に続く道の先から、水の気配を感じる
引き寄せる様に足を踏み出す
足の下で踏みつけられた木の葉がしめった感触を伝える
やがて木々がまばらになり、目の前に大きな湖が姿を現す
湖の上に浮かぶ、太陽が強く辺りを照らし
湖面に反射した光がきらきらと輝いている
微かに吹きつける風が、小さなさざ波を立てている
湖岸に座り、光を反射する水面へと手を伸ばす
確かに感じる水の感触
現実の手触り
不意に、強い風が湖面を波立たせ
充分な水分を含んだ風が髪をさらう
ひやりとした感触に、微かに身を竦めた時
「なんだ、迷い込んだか」
背後で不意に聞こえた声
振り返った先に、再び立ちこめた霧
目を凝らし見据えた霧の中に浮かぶ2つの人影
戸惑ったように歩み寄った人影が
「………ごめんね……」
小さく呟き
「――――――――――――」
やわらかく聞こえた声
同時に視界が深い霧に閉ざされ……………

頭上には暑く照りつける太陽
周囲には森どころか、1本の木すらも存在しない
立ちすくむ地面からゆらゆらと立ち上る陽炎
程良い冷たさをはらんだ空気は欠片も残っていない
―――白昼夢?
暑さが見せた幻かと、視線を落とした先
しっとりと水に濡れた手が見えた

そして、数日後
突然現れた森の奥深くに、あの日見た湖が存在していた

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