谷間を流れる川の水音が聞こえる
街からほんの少し歩いた荒野に集まった人々の姿
期待に満ちた、ほんの少し不安そうな視線
天に昇った太陽が、じりじりと辺りを照らす
照らされる暑さに流れ落ちるあせをぬぐいながら
誰もが、人々の中央、布に覆われた物体に注目していた

やがて、人々の向こう側へと現れる人影
彼等の手で次々と運ばれてくる
様々な形状をした部品
人々の視線の中で、ソレは組み立てられ
谷間の下を流れる川へと投げ込まれる
遠く、微かに響いた水音
高まる期待
組み立てられた部品が、布に隠されたソレにつなげられる
人々が見守る中、覆いがゆっくりと取り払われる
姿を現す石造りの機械
「良し、始めるぞ」
辺りに、少し浮かれた声が響く
息をのみ見守る人々の姿
―――3、2、1―――
自然に沸き上がる、声
ほんの少しずれた「0」の声と共に
中央に置かれたソレから噴き上がる水
高く噴き上がる噴水
辺りに満ちる一瞬の静寂
降り注ぐしぶきを身に受け、歓声がわき起こった

髪を滑り落ちる水の滴
絶え間なく降り注ぐ噴水が、辺りの空気を冷やしていく
不格好な噴水を中心に、水分を含んだ空気が辺りに広がっていく
「―――綺麗ね」
すぐ側で呟かれた声
声に引かれる様に見上げた空に虹が見えた

 
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