新年の始まりは、のんびりと家族で休日を―――
なんて事は、一つの理想
実際問題として、のんびり休日をなんて事は出来ない
年明け早々、大統領は忙しい

まずは、国民に新年の挨拶
続けて、長い歴史に乗っ取った(らしい)伝統行事が長々と続く
さまざまな行事が終わる頃には、1日の半分は無くなっている
それはこの際、仕方ない
何年もやってきた事だから諦めだってついている
ついてるんだけどな……
問題はその後、延々と続く行事も終わって、帰ろうって時になんだって新年の挨拶なんてモノを送ってくるんだ?
しかも、挨拶なんてモノ書簡で充分だってのに
わざわざ映像を使って、人の事を呼び出しやがる
他の国の奴等ってのは、どうしてこう、休みの日に働きたがるんだろうな?
おめでたい気分でいる時に、見たくも無い顔なんか、無理して見なくも良いだろ
全く、お陰で貴重な休みがつぶれちまう

―――年に1日は家族揃って………
折角家族が顔を揃えてるってのに、どうでも良い事に邪魔される
俺は、まぁいいけどよ、どうせ彼奴は帰って来ないだろうしさ
けどな、俺の周りの奴等が可哀相だろ?
こんなくだらない事のお陰で、貴重な時間が潰される何て言うのは冗談じゃない
だから、一つ先手を打たせて貰う事にしたんだ

「ただいまー」
陽気な声と共に、主が帰ってくる
とたんに周囲が騒がしい気配に包まれる
…………
「お帰りなさい、早かったね」
扉の向こうで交わされる言葉を聞くとも無しに聞きながら、先ほどまでとのギャップにため息が零れる
軽い足跡が近づいてくる
だまされてる奴は多いんだろうな
ゆっくりと開く扉
公式行事に顔を出す時と、普段との激しい落差にそんな事を思う
開いた扉の向こうで、驚いた様に目を見開く
「……おかえり」
「ただいま」
入り口で固まっているラグナに声を掛けると、嬉しげに答えた

年明け早々、各国へと1通の書簡が届く
エスタからの新年の挨拶が収められたそれは
一方的な映像を1時間以上ながし続けた上、直接の挨拶の辞退を告げた
その後数日間、「休日」という言葉を武器にエスタ政府は、沈黙を押し通した
 

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