あちこちに飾り付けられた彩り
落とされた電灯の変わりに備えられたキャンドルの揺らめき
挨拶を交わし歩く人々の手にあるのは、様々な形をしたキャンドル
既に火を灯した者
大切そうに抱える者
両側に灯された明かりと、流れていくキャンドルの明かり
少し上から見る光景は、不思議と神秘的に見える
何気なく伸ばした手が感じるのは、暖かな熱
いつか見た光景が美しく見えるのは、宿る光が暖かいからだろうか?

「火をつけてね、燃やすの」
そういって渡されたのはなんの変哲もない真っ白な四角いキャンドル
思わずまじまじと見つめると、不思議そうに問いかける声
何かあると思っていたんだけどな?
用意されていたのが普通のキャンドル、なんていうのは予想外の出来事
視線をながした先には、わくわくした様な顔
………絶対なんか在りそうなんだけどな?
疑問に思いながらもキャンドルに火を灯す
炎が揺れる
暖かな光が辺りを照らす
少しの間じっと見つめて居たがなんの変化も起こらない
内心不思議に思いながら、美しい炎を窓辺へと置いた

賑やかだが、不快ではない時間が過ぎる
人の居なくなった部屋に残されたのは、人々の温もりと思いの残滓
楽しかった時間の余韻に微かな笑みを浮かべて、一つ窓際で揺れる灯りを手にする
―――消えて無くなるまでこのままにしておいてね
そう言った声が耳に聞こえる
優しい炎の揺らめき
そして
キャンドルの中から何かが顔を覗かせている
なんだ?
揺れる炎の向こうに目を凝らして見えたのは、緑色の葉
良く燃えないものだな
首をかしげて取り出したそれは
コーティングされた四つ葉のクローバー
「面白い仕掛けだな」
感心の声は、炎の中に消えていった