また年が明けて、始まる新しい一年
幾度も経験する“驚き”
初めて感じる感覚
きっともたらせるそれを楽しみにして
また一歩を始めよう

年が明けたその日の朝
窓から見えるのは相変わらずの景色
晴れ渡った青空は見えないし
緑豊かな森の姿も無い
年が変わったからと言って劇的な変化が起きたりするわけがない
全ては今までの積み重ね
それでも………
「今日は穏やかな天気だな」
背後から聞こえた声が、少し嬉しそうにそう告げる
「そうね、気分も良いわ」
近頃はだいぶ気候も落ち着いてきていたけれど
確かに、今日はずっと昔の様な青空を見ることは出来ないけれど、穏やかな天気
―――当たり前になると、忘れてしまいそうな事
「久しぶりに出かけるのもいいかもしれないな」
近くへ行くのとは違う口調に思わず振り返った私は
「一緒にさ、出かけてみないか?」
続いた言葉に、安堵した

お昼
久しぶりに出かけた街
記憶の中のどれとも重ならない姿
驚き、辺りへと視線を投げる私の疑問に、得意げな説明
私が知らない様々な事
少し乱暴な説明に、私が知らない貴方の様子が想い浮かぶ
あちこちから、私達にかけられる声
戸惑う私の手を引いて
あなたが、幾つもの言葉を交わす
かけられる声に導かれる様にしてたどり着いたのは、一件の食堂
特徴の無い建物の形に、見覚えがある様な不思議な感覚に襲われる
一歩、店内に足を踏み入れて
「おめでとう」
の言葉があちこちからかけられる
知っている声
知っている顔
「驚いただろ?」
そう言って笑う、得意げな顔
「………驚いたわ」
ここに揃った顔を見れば、そう答えるのがやっと
知った顔が揃っているのはとても偶然の筈が無くて、私が知らない間に打ち合わされていた事だと解る
彼が一歩先に、彼等の元へと足踏み出す
からかい言葉にじょうずに返事をして
彼等の中心で、私の方を振り返る
視線に促されて、私もその中へ足を進める
「久しぶりね」
「違うだろ、こういう場合は………」
いつもの仕草に促されて
「そうね、………おめでとう」
幾つかの声が重なった

気づかなかった事
知らなかった事
忘れていたこと………
幾つもの驚きと共にもたらされる“新しい”感覚、感情
もたらす人はいつもあなた
これからもずっと、お願いするわ