暗闇の中に浮かぶ微かな光
淡く穏やかな光は広がって
夜をうっすらと明るく照らす
窓に着いた右手がそとの冷気を伝えてくる
高く澄んだ鐘の音が響く
さざ波の様に広がっていく声
新しい年の始まり
「あけましておめでとうございます」
背後を振り返って告げた言葉
「………ああ」
素っ気ない返事
それから
「おめでとう」
小声で告げられる言葉
窓の傍を離れて彼の元へと進む
「そろそろ行こうか?」
皆への挨拶に
嫌そうに顔を顰めて見せて
しかたないとでも言うようにもったいをつけてソファーから立ち上がる
思わず零れる小さな笑い
不機嫌そうな顔も一瞬
「行くんだろう」
手が差し出された

何度も繰り返される挨拶の言葉
宮殿内を、外を歩いて出会った人達と言葉を交わす
時折用意された食事をつまんで
他愛もない話をして
笑って
そうして、年明けの淡い光の祝福も無くなる深夜
誰からともなくそれぞれが帰っていく
「帰ろう」
「―――ああ」
伸ばした手が繋がれる
暖かな温もりに自然に口が綻んだ

暖かな温もりが頭に触れる
一度離れて今度は頬に
どこか遠くで聞こえる音
少し、息苦しい
――――――
「起きたな」
私を覗き込んでいるアリオスの顔
思わず凝視していた顔が嬉しそうに笑う
「ま、今年もよろしくな?」
アリオスの言葉に、何度か頷いて手を伸ばす
暖かな温もりが、とても大切な幸せ

 
 
 


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