郷愁

なつかない子供
くるくると変わる表情
まとわりついてきたその辺のガキとは違って
些細な事ですぐに泣き出すから
いったいどう接していいものか、判らなくなった

子供の泣き声が聞こえた
「どうした?」
街道の途中聞こえてきた声にジェクトは立ち止まり辺りを見回す
「いや、ちょっと今声がな……」
「声?」
見渡した限り子供の姿どころか、人の姿さえ見えない
「わりぃ、気のせいだわ」
そう言って
ジェクトは何事も無かったかの様に歩き始める
……気のせい、だよな
歩きながら振り返った視線の先にはやはり何も見えない
この場所では聞こえる筈のない耳慣れた声
「幻聴ってやつか」
まさか、このジェクト様がそんな物を聞く事になるなんてなぁ
「………聞いてるのかっ!?」
やれやれと、肩を回すと同時に、間近から聞こえる怒鳴り声
「聞いてるって」
口うるさい友人に、適当に返事を返し、何処までも続く空へと眼を向ける
「……あいつ、どうしてっかな……」
思い出す記憶は、泣き顔ばかり
耳に残っているのは泣き声
「また、泣いてんのかもな」

思いもしない場所に来て、思いも寄らない体験なんてのをしちまった
お陰で前よりちっとは、ガキの扱い方も覚えたってもんだ
あいつ泣き虫だからな
側に居てやらねえと
帰ったら今度こそ、優しくしてやれると思うんだよな
だからさ…………
早く帰りてーよなぁ


〜FF10〜

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