日頃は近づく事もない街中、商店街
この時期に視察に訪れたのは偶然
そこで目にした鮮やかなディスプレイ
窓に踊る一つの文字
「へぇ、そんな時期だったか……」
そんなありふれた感想と共に、気軽な気持ちで一件の店舗へと足を踏み入れた

日頃見慣れ無い鮮やかな色彩
気に留めて見る事も無かった品物の数々
辺りを埋め尽くす華やかな光景に足が止まる
……ちっと場違いな所にきちまったか?
このまま気付かれないうちに、さっさと店を出るか……
「いらっしゃいませ」
店を出ようと、方向を変えようとしたとたん、狙ったかの様にかけられた声に動きが止まる
「何をお探しでしょうか?」
にこやかに笑みを浮かべて近づいてくる姿
何って言われてもなぁ
「……何が良いんだろうな?」
こちらを見つめる視線に負けてそんな言葉が零れ落ちた

案内されたのは、店の奥に用意された特別室
目の前の机の上には、店のオーナー自らが運んできた
『ご婦人方に人気の商品』
が並んでいる
一つ商品を出すたびに、事細かな説明してくれるのだが
……わりぃけどさっぱりわかんねーんだよな………
何処のメーカーの物、とか
どの辺りが人気なのか、やら
どれだけの歴史がある、など
力を入れて説明されても
―――どれも同じに見える
「いかがでしょうか?」
一通り説明を終え、期待を込めた目でこちらを見つめている
そう聞かれてもなぁ
困惑したまま、目の前に広げられた品々へ視線を映す
どこか華やかな感じを受ける品々
……どうもしっくり来ないんだよな
イメージに合わないっていうか、もう少し………
「………なぁ、こういうのじゃなくさ―――」

そして数日後
手の中に小さなプレゼントの箱を用意して家の前に立つ
箱の中には特注で作られた銀細工
シンプルなそれはきっと似合うはず
驚く顔が見たくて、ラグナはそっとチャイムを押した