Lock

珍しいものや滅多に手に入らないものを探していたのは昔のこと
称賛の眼差しや
特別が欲しかった頃
多少の無理をしていろんなものを探し回った
今は、そんな無理をしようとは思わない
特別でありたいという感情が色褪せた訳じゃない
無理に理由を付ければ
それどころでは無い世界の状況だの
品物だって昔と違って置いてないだの
都合の良い事は言えるけれど
本当の所はとても単純
無理や無茶をしなくても、“本当”は伝わっている
だから、今は間違えずにありったけの気持ちを贈る
「あと少しだな」
楽しげな笑みを浮かべた手の中で、木の削れる音がする

リボンで飾られた荷物を手に家路を急ぐ
プレゼントは何日も費やして作った椅子
多少不格好だけれど、座り心地には自身がある
きっと、セリスは喜ぶだろう
渡したら、きっと使ってくれるはず

Celes

貰うばかりで、贈る事なんて考えた事も無かった
いつも貰っていたのは
打算や計算
影に隠れている様々な思惑
そんなものばかりが見え隠れしていた頃
私自身が誰かに贈り物をするなんて、考える事もしなかった
今になってこんな似真剣に贈り物を用意するのは
始めて貰った感情が温かかったから
贈られる純粋な感情
真っ直ぐに向けられる思い
寄せられる好意と向けられる感情が嬉しかったから、私も同じものを
手に入るものは限られている
大した物は用意出来ない
だけど、今できるせいいっぱいのものを
同じように、ありったけの心を込めて贈る
「気に入ってくれるといいけれど」
緊張した面持ちで、針を動かした

大きな包みを手に家路を急ぐ
プレゼントは何日も費やして作ったクッション
形は歪んでいるけれど、心地よさには自身がある
きっと、ロックは喜んでくれる
渡したら、抱きしめてくれるはず


 
 
 
 

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