街へと灯る灯りが静かだ
今日みたいな日は誰もが家路を急ぎ
家族との時間を穏やかに過ごす
こんな日のこんな時間に仕事をしているヤツなんていない
何か買い忘れた物でもあったのか、慌てて無人販売機へと駆け込む人の姿がごくまれに見れるだけ
コレがエスタのスタイルで、エスタだからこそ出来る事
人間の代わりに機械達が仕事をする
たかが、朝までの十数時間
人の手が入らなくてもなにも問題はない
ラグナは誰もいない街をゆっくりと歩く
『たまには外を回って帰るってのもいいだろ?』
仕事場を出る際に告げた言葉には別に深い意味なんか無い
『まぁ、人もいませんからねぇ』
危険も無いし、騒ぎも起きないだろうと遠回しに告げられた言葉
危険は滅多な事では起きたりしない
騒ぎは………種類は様々なだが頻繁に起きている
っていっても俺のせいじゃないんだけどな
不自然に力が入った足元で、小さく靴の音がする
まぁ、誰もいないならそんな騒ぎが起きることもないって事に関しては賛成するけどな
吐いた息が白く曇る
しんと静まりかえった世界から、微かに聞こえてくる音
閉ざされた家の中から漏れ聞こえる声
楽しげな声につられるように笑みを浮かべ
身体の向きを変える
そろそろ時間も頃合い
一騒ぎする準備も出来た頃
ラグナは、家路をたどり、そして、もう一度官邸内へと戻る
誰もいない場所
灯りもつけずにこっそりと机をあさって
手にプレゼントの包みを抱え持つ
「それじゃあ、帰るか」
こっそりと、私邸へと続く廊下を通り
にぎやかな声を聞きながら気付かれないよう一仕事を終える
そうして、再び職場を抜けて………
暗闇の中“家”から漏れる灯りが見える
上がった息を整えて、限界の扉を勢いよく開ける
「ただいま!」
の声と共に
暖かい家
家族の待つ場所
―――平和の象徴へ足を進める