家中に甘い香りが充満していた

「スコールはお酒は強い?」
匂いが気になり、覗き込んだキッチンではエルオーネが楽しそうに動いていた
邪魔をしないように立ち去ろうとしたスコールを引き留めたのはエルオーネで、材料をかき混ぜたりオーブンを覗き込んだりしているエルオーネを目にしながらスコールはテーブルの片隅でお茶を飲んでいる
「弱くはない」
材料に使うらしい酒瓶を手にした質問に、スコールはほんの少し考えながら慎重に答えを返す
強いかどうか即答出来るほどの経験は重ねてはいないが、多分弱くはないと思う
「そう、ならスコールはレイン似だね」
エルオーネの手から少なくはない量のアルコールが注ぎ込まれる
ラグナが酒に弱い事は知っている
「レインは強かったのか?」
「どれくらいかは解らないけどね」
楽しげな口調と笑みを浮かべる口元
エルオーネの視線がスコールへと向けられる
「スコール、甘いモノも好きだよね」
疑問系では無い問いかけに不意を突かれる
「………い、いや、俺は………」
「変な格好つけなんかしなくていいからね、だいたい甘いモノは疲れも取れるし、脳の活性化にも役立つし、エネルギーが高いからいざというときの非常食としての役にも立つしいろいろ便利なんだからっ」
だから甘いモノが好きだってさっさと認めなさい
まくし立てる言葉に圧倒されて、気が付けば頷いていた

甘い匂いがする
「はい、味見」
ふんわりと広がる酒の味
「どう、おいしい?それとももっと甘い方がよい?」
間近で覗き込む目がいたずらっぽく輝いている
答えがわかっていて聞いている
味見にと口の中に放り込まれたソレは酒の味ばかりが強くて、甘みはほとんど感じなかった
「もっと甘い方が良い」
スコールの言葉と同時にオーブンが音を立てた
「ちょっと待ってね」
甘い匂いが一段と強くなる
多分きっと、次にできあがるモノはスコールの好みの味付けになっているんだろう