冷たい風が通り過ぎる、天気の良い冬の日
各地から届く人々の祈り
両手を広げ、彼等の思いを受け止める
今日は特別な日、聖なる一日
遙か遠い昔、全てが始まった時

白い羽根が宙を舞う
抱きしめる様に伸ばされた腕
微笑みを浮かべる唇
閉ざされた瞳
長く、短い時間が過ぎる
そして、開いた瞳は嬉しそうな色を浮かべた

強引な約束を取り付けて行った彼女を待つ間
手持ちぶたさで立ちつくす
……もう少し遅くくれば良かったか
太陽が顔を出しているとはいえ、吹き付ける冬の風は冷たい
時間よりもだいぶ早い事を判って居ながら、この場所に来たのは自分
背中を壁に預け、目を閉じる
待つのも悪くない
……仕方ねえよな
むしろ、待つ事を喜んでいる自分に呆れたような笑みが浮かぶ
万が一、あいつの歩が先に来たりしたら……
言う気も無いし、言える筈も無いが
何か悪い事が起きないかと心配でならない
のほほんとしてるからな、あいつ
誰に聞かれた訳でも無いのに、言い訳を浮かべる
そして、何かの気配に気付く
ゆっくりと開いた目に、きらきらと舞降りる光の粒子が見える
なんだ?
とっさに伸ばした手を光の粒がすり抜ける
けれど、触れると同時に感じたのは、どこか柔らかな想い
知っている様な、初めて感じる様な、そんな不思議な感覚に彼は手を伸ばしたまま首を傾げた

誰かから誰かへ届けられる想い
此処に届くのは優しいん感情ばかりだから
彼女はその想いを人々へと返す
優しい想いに心が浮き立つのを感じながら
想いを届けた相手も、想いを受け取る相手も、共に幸せである事を祈りながら

きらきらとした光の粒子が消える頃
「―――っ」
名前を呼ぶ声と共に、笑顔で手を振る姿が見える
駆け寄ってくる表情は満面の笑み
暖かな想いが胸に沸き上がる
「転ぶぞ?」
いつもの言葉が零れた口元には、優しい笑みが浮かんでいる
「もうっ……」
にこにこと笑いながらの抗議の言葉
いつもと変わらない光景、変わらない態度
けれどどこか満たされた様な感じがする
「それじゃ、行くか」
差し出した手が温もりに包まれる
そして、歩き出した足は彩り豊かな街の中へと消えていった

 

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