新たな始まり


 
崩れ落ちる塔を彼等は見上げていた
すべてが大地へ帰っていく
塔がくずれ落ちる光景は、新たな世界の始まりを告げる
きっと、この光景は、近隣の街の人々にも見る事ができるだろう
「………終わったな」
長い間共に戦って来た仲間の1人の言葉
彼等は、塔が崩れ落ちるのを見届けそれぞれの居場所へと帰っていった

「これからどうするの?」
瓦礫が散らばる大地の上で、セリスはそっと聞いた
ケフカを倒し、やるべき事は終わった
仲間達は次々と旅だって行った
再会を約束する者……
何も言わず消えていく者………
最後にロックとセリスの二人が残った
「そうだな……」
踏み出した足の下で、瓦礫が音を立てて崩れる
崩壊を免れた世界が優しい日差しを投げかけた
日差しに手をかざし眩しそうに空を見上げる
「セリスは、どうするんだ?」
その事をセリスに答える事をロックは躊躇っていた
金の髪に光が反射する
「私?私は…………」
声に含まれているのは、戸惑い、そして………
音を立てて、瓦礫の一部が崩れる
沈黙を風がさらっていく
どちらも、1つの言葉を口にする事を躊躇っていた
やがて、微かな言葉が聞こえた
………一緒に………
小さな声を風が、相手の元へ届けた
どちらの言葉ともつかない小さな言葉
一呼吸分の間を置いた後、二人は瞳をあわせる
驚いたように見つめる眼
そして、ほんの僅かに頷くだけの小さな同意
ゆっくりと、彼等の顔に微笑みが広がる
ロックの手が、セリスへと差しのべられる
「行こう」
セリスの手が、その上に重ねられる
「どこへ行くの?」
微笑みながら、セリスは一歩足を踏み出した
「そうだな……」
同じ言葉が、違う口調で語られる
ゆっくりと、二人は足を踏み出す
「まずは、旅をしないか?」
「旅?」
足の下で、踏みつけられて瓦礫が音を立てる
「ゆっくりと世界を巡って………」
「……それも、良いわね……」
ロックが語らなかった言葉を汲み取り、セリスは明るい声を上げる
平和な世界を二人で、ゆっくりと自分達の足で巡る
きっと世界は、希望と活力に溢れているはず
駆け足で、通り過ぎた世界を今度はゆっくりと……
そして………
崩れ落ちた瓦礫の塔へ背を向け
二人は新たな世界へ足を踏み出した

世界を救う勇者達の物語は終わった
彼等1人1人の物語は続いていく

 
END