微熱


 
風が髪を撫でた
ほんの一瞬の出来事
唇を掠めた暖かさ
え?
とっさの事でなにが起こったのかすぐに理解は出来なかった
掠めていったのは、彼の唇
身体が、顔が火照る
こんな時なんて言えば良い?
どんな行動をとれば良い?
睨み付ける?
『何をする!』と言って怒る?
私は、実際には凍り付いたように動けない
好きな人からの初めてのキス
嬉しいとか、幸せとか………
そんな感情ではなく
とまどいが心を支配している
なんでもないかの様に、何事もなかったかのように
彼は、背を向け遠くを見つめる
私は、キスをされた実感が湧かずに、リアクションを返せない
彼の態度が手慣れているようで
私はほんの少し、八つ当たりめいた感情を覚える
こんなのは卑怯だ
誰にも負けないと思っていたのに
実際、勝負毎は負けたりしなかったのに………
『恋愛は勝つか負けるかの真剣勝負』
ふと、昔耳に挟んだ言葉を思い出す
命のやりとりがあるわけでもない、そう思ったのは昔……
壊れそうな程心臓が脈を立て始める
時間が経って、少しずつ、実感が湧いてくる
今回は私の負け、かな?
そっと、顔を伺ってみる
視線を合わせないその瞳が、照れた様に宙を彷徨う
なんだ……
柔らかな笑みが浮かぶ
あなたもそうだったんだ
一瞬の不意をついたキス
今度の勝負は、負けないように
私から仕掛けてみようか?
 
 
END