悔恨


 
「信じている」
簡単な一言を言うことが出来なかった
思い出すたびに後悔が身を貫く
責める訳でもない
それでいて、縋り付くような瞳
断ち切るように、引き留めるように
絞り出された声
そして………………

何も言わずとも分かり合える
それとは少し違う
あのときほんの僅かに躊躇ったこと
身を呈して、自らへの疑惑を断ち切ろうとした姿に
「信じている」
その一言が言えなかった自分に対して、深い後悔の念が沸き上がった
激しい爆音と、吹き付ける炎
振り返る事も出来ずに逃げ出した
きっと、無事でいる
そう言い聞かせながら、そう信じながら………

まっすぐに見つめる瞳
そして、悲しげにゆがむ瞳
命を投げ出したその行為は、信じても良いのか?
…………信じられる行為…………
考えれば解る事
存在そのものが信用出来ないと思っていた相手と、仲間である相手と、信じるに値するのはどちらなのか、すぐにでも解ったはず
仲間達は何も言わない
責められても仕方のない事だというのに
そのことに対して、誰も何も言わない
いっそ、責めてくれれば楽になれる……
ふと過ぎる思いを頭の中から追い出す
逃れてはいけない
「守る」
そう言ったのは自分、簡単に口にした言葉には、どんな意味があったのだろう?
かつて、守る事ができなかった、その事に対する罪滅ぼしだったのだろうか?
守る事が出来なかった
信じる事さえ出来なかった
心を過ぎるのは、深い後悔
そして、心を痛めるのは罪悪感なのか?
無事でいて欲しい……
それは偽りのない願い
だが、なぜそう思うのだろう?
単なる罪悪感でないと確信する事ができない
もう一度会う事ができれば、理由も解るだろうか
それとも、また同じ事を繰り返すのか?
ロックは、帝国の方角を見つめる
――――セリス――――
今はまだ、解らない
確信を持って発言する事が出来ない
解ることがあるとしたならば
セリスは、確かに自分たちの仲間だと言うこと
次は後悔などしないように
心のままに、信じるままに………

そして、再会を果たした時
ゆっくりと心が動き出す

 
END