秘宝


 
荒れた岩肌をロックは慎重に昇っていた
世界崩壊後、地形の変化によって現れたその場所を目指して

長い間探し続けてきた秘宝
その噂を聞いたのは、戦いと事故で負った傷が癒えかけた頃の事だった
語り継がれていた伝説と同じ地形の出現
真実その場所にフェニックスが眠っているという確証は無かった
遙か昔に、誰かが運び出してしまったかもしれない
気弱な考えが頭を過ぎる
焦がれる程望んでいた秘宝を手にする事を躊躇う心が、ほんの僅かに存在していた
フェニックスを手にいれても望む結果が得られないとしたら?
全く手がかりを得られない、そんな状況ならば、手に入れさえすれば、と純粋に希望だけを持つことができた
けれど、それが現実味を帯びたとたん、不安と悪い結果ばかりが浮かんできた
そしてもうひとつ………

傷が癒えると、ロックは、旅立った
フェニックスを手にいれる為に

灼熱の溶岩が流れている
焼け付くような熱気が足下から這い上がってくる
ロックは、巧妙に仕掛けられた罠を一つずつ丁寧に外していく
1人では決して越える事のできない仕掛けの出現にも、慌てる事無く周囲を見渡す
―――――あれだ
仕掛けを作る時に使われただろう足場
そして、消し去ったはずの抜け道
ゆっくりとではあったが、的確に道を探し出していく
道といっても、本来道ではなかったものばかり
一歩踏み間違えれば、溶岩の海に投げ出されそうな道
崩れ落ちそうな岩壁
少し間違えれば命を落とすだろう
ロックは、充分に休息をとりながら、幾日もの時間をかけ、ゆっくりと内部を進んでいった

そして、ついに秘宝を目の前にしていた
堅く閉ざされた宝箱
それを前にロックは少しの間躊躇っていた
中身は残っているのか?
 閉じた蓋は中身が未だここに有ることを物語っている
もしなかったならば?
 きっとあるだろう
ロックは迷いを振り切る様に頭を振り、ゆっくりと蓋を持ち上げた
独特の輝きが辺りを照らし出した

長い間探し求めた秘宝が見つかった瞬間
ロックは、長い間とらわれていた過去から僅かな一歩を踏み出した

END