気配


 
雨の匂い
雨の音

真夜中、微かな音で目が覚めた
普通なら気付かないくらい小さな雨音
彼女は、そっと身を起こす
感じるのは雨の気配
自分以外の生き物の気配が消えてしまう夜
こんな夜は、じっと耳を澄ます
雨音に遮られながら微かに聞こえてくる寝息
彼女はようやく安堵する
自分1人が取り残された訳では無いことに

夜の匂い
夜の静寂

闇を照らしていた灯りが消えた
ふいに訪れる暗闇、痛いほどの静寂
彼はその動きを止める
深く眠りに落ちる生き物の気配
虫の声さえ聞こえない静寂にみちた夜
こんな夜は、息を詰め辺りを伺う
静寂の中で微かに聞こえた物音
彼は安堵の吐息を漏らす
自分1人が取り残された訳では無いことに


ふいに人の気配が恋しくなる時
彼女は、彼は、無意識の内に彼を、彼女を救い出す
そして、朝
夜の寂しさを思い出し、すぐにあの安堵感を思い出す
だから
寂しさを感じた翌朝は
彼女も彼も、優しい笑みを浮かべる

END