風音
空を渡る風に舞い上がる砂塵
空高く浮かぶさえざえとした月
深い藍色に染められた夜の空
砂漠地帯独特の夜の冷え込み
渡る風が窓を揺らす
風がうなる音に重なって、遠くから足音が聞こえた
風が、草の香りを運んで来る
すぐ側の丘に咲く草花の匂い
足を止め、空を見上げる
上空には澄み渡った青空
風が挨拶をするように、身体を包むように吹き抜ける
風に乗って、自分を呼ぶ声が聞こえた
夜の闇、空に浮かぶ白い月
もの悲しい光景
寂しさを思い起こさせる風景
脳裏に少女の面影が思い浮かぶ
寂しさを内に秘めた少女
ゆっくりと眼を閉じ
不思議な雰囲気を称えた少女の面影を追う
今、彼女は――――
遠い地に住む彼女へと思いを馳せた
子供達の声に笑顔で答える彼女の周りには
優しく風がまとわりついている
世界を巡ってきた風がそっと、囁きかける
「何か楽しいことでもあった?」
彼女の問いかけに風と子供達が答えを返した
小さな音を立てて、そっと窓が開け放たれる
冷たい風が、室内の気温を一気に下げる
風が髪を揺らし、幾分その勢いを弱める
「―――――――っ」
風の音に紛れた囁き
ささやきを抱き込んで、強い風が吹き抜ける
「―――――――っ」
耳元で見知った声が囁く
風が運んで来た囁き
驚いた様に眼を見開いて
そして、柔らかな笑みを浮かべた
END
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