命の気配


 
照りつける日射し
辺りを渡る熱風
見上げる空は、澄んだ青さ

流れ落ちる汗をぬぐいながら
誰もが笑顔で、これから訪れる夏の暑さへの備えをする
一仕事毎に吹き出す汗
天気の話をする声も
夏の暑さに口をつく文句も
楽しげな笑い声と、心からの笑顔に包まれている

聞こえてくる微かな水音
水が流れる小川
足もとを覆う、鮮やかな緑

川の流れの中に素足で立つ
心地よい冷えた感触
水の流れを足で感じる
足に、何かが触れる微かな感触
視線を落とし、水中を慎重に見つめる
何か、悪いモノで無ければ良いけれど……
日の光を反射する小さな揺らめき
透き通った水の中に、小さな魚の影が見えた
その姿に、知らずこぼれる笑み
「どうしたんだい?」
セリスの様子に気づいた1人の村人が水の中をのぞき込んだ
「!、見てごらん、魚が居るよ!」
辺りに響き渡る声
弾かれたように駆け寄ってくる村人の姿
集まった人々が少しの間無言で、川を見つめている
「……これで、この川も安心だね」
誰かがこぼした言葉に、皆が一斉に頷いた

綺麗に晴れ渡った青空
流れ始めた透明な小川の水
澄み渡った空気
急速に回復する世界
かつては見過ごしていた出来事も、今はこんなにも大切な出来事

END