感情


 
視界に入る姿に沸き上がる感情
それが何を意味しているのか、それを何と呼ぶのか
良く、知っている
―――知っている……?
それは正確には間違いだ
これは、昔知っていた感情と良く似通っている
以前と同じ感情
以前は感じる事のなかった感情
その一挙一動に浮かび上がる想い
複雑に絡んだ感情に乱される思考
あの日以来、半ば義務の様に、生きる為の条件の様に意識の奥深くにこびりついていたそれとは違う別の場所から発生する想い
守らなければ
守りたい
俺が、守る
同じ様でまったく違う感情
“今度は”とか“あの時とは違う”とか
そんな言葉がいつの間にか消え去っている
過去は関係なく発生する気持ち
今、目に鮮やかに映る姿
祈りにも似た思いが囁く
どうか、その存在を守らせてください

目にする度に沸き上がる感情
―――この感情を何と呼ぶのか、俺は知っている


END