はらはら、はらはら、と舞い散る落葉
どれほどの数が散っただろう
幾重にも重なった落葉の層
足下に敷き詰められた鮮やかな色彩
重なりあった、ソレをそっと、手で払いのける
枯葉が乾いた音を立てて崩れる
水に濡れた落葉が形を変える

やがて現れる湿った地面
少しずつ、少しずつ、かき分ける範囲を広げていく
枯葉の下から現れたのは、小さな石版……石碑
たぶん、私達以外には意味をなさないモノ
ゆっくりと表面をなぞり
砂を、土を払う
浮かび上がる文字
深い森の中
晴れ渡った秋の日差しが、葉を散らす木々の間からこぼれてくる
そっと、大切に拭き清めた石碑
もう誰にも読むことのできない、文字を指でたどる
ふれた指先から反応を返す様に、脳裏に描き出される
遠い昔の物語
ずっと昔、一度世界が滅びかけた時の出来事
城の片隅で偶然見つけだしたこの石は
隠された物語を語ってくれる
歴史よりも詳しく、真実を
英雄となった彼等が何を思い、感じていたのか
もう決して語られる事のない真実
魔法が消え去ったこの世界にただ1つだけ残された魔法
綺麗な石の中に閉じこめられた記憶
『みんなが生きていた証……』
最後の最後に残されている柔らかな感情
誰に伝える訳でもなく
誰かに知っていて欲しいと願ったのでもない
ただ、それだけの思い
私は、これを残したのが誰なのか知っている
私の手に触れて弱い光を放つ石
城に残されたあなたの、あなた方の姿絵
私は、遠い祖先のあなたによく似ていると言われるけれど
私は、あなたの様になりたい
あなたの様に強く生きたい

はらはらと落葉が散る
忘れ去られていた石碑の上に
再び落葉が降り積もる
偶然見つけた綺麗な石
思いが込められた小さな石碑
きっと、あの方は誰にも知らせるつもりがなかったから
この存在を私は誰にも言うつもりはなくて
きっと、私が居なくなった後、遠い未来に誰かが発見するかもしれない
 
 

END