火種


 
軍の上層部で行われる会議
「バラムとの国境沿いの警備の増強」
今後の動向としてあげられた項目は、特に反対の声が上がることなく可決された
国境の警備が増強される
そうは言っても、国境は森の奥深く高い山の頂に在るため兵士を常駐させるのも難しい
「とりあえずは機械を配置しておけば良い」
今は監視システムを設置し、基地そのものは森林の手前、辺境の村の辺りに設置する
将来的にはまた別の仕組みを配置する
そう決定し強化されたのが数ヶ月前
システムは問題なく動いていて
今の所国境を越えて侵入してくる事例も無かった

「バラムに不穏な気配があるようだ」
目の前に書類を置きながら、何かのついでの様にキロスが言う
「まぁ、そうだろうな」
幾人かが仕事の手を止めこちらへと視線を向けている
「どうしますか?との質問が来ているが」
「どうするも何も、なぁ」
不穏な気配があるってだけで、実際に何かをした訳じゃない
表だって動くには早すぎる
「どうしようもないだろ」
現状維持
「ということだ」
キロスが彼等へと視線を向ける
視線を向けていた奴等の内の何人かが安堵したような表情を浮かべる
つまり、なんかするって思われてたって事だよな
「他の国のことになんか手はださないぞ?」
ラグナの言葉にいくつか曖昧な返事が聞こえる
バラム内部の事に手を出す事は無いが、警戒する必要はある
矛先がコッチに向くってことは無いだろうが
状況によっては少し面倒な事になる可能性もあるかもしれない
さりげなくキロスへと視線を向ける
見返された視線が微かに頷く
不穏な気配を感じる
なんてわざわざ報告してきたって事は、そろそろ動きがあるってことだろ
バラムにはより一層の警戒が必要、か
それ以上の話はせず、他の仕事の話が続いた

「火種になったな」
『まぁ、わかりきったことだがな』
どこか楽しげなキロスの言葉にウォードが肩を竦める
「ガルバディアの方は動きはないんだろ」
『今の所はそれどころじゃないんだろ』
「それも落ち着けば動きだすことは間違いないだろうがね」
言葉が少しばかり投げやりになるのも、まぁ当然だろうな
火種だけは自分が火種である事に気が付いていない
「どうするのかと思ってはいたんだけどな」
今は火種は燻っている状態だ
火が付く前にどうにかするのかと
―――どうにかするだろうと思って見ていたが
「どうにもならないだろう、責任者は、責任を放棄しているのだから」
責任を放棄している、か
「それに関してはあんま人の事は言えないんだけどな」
ラグナの言葉に小さな苦笑が返る
『それとは違うって言えると思うけどな』
軽口を返しながら思う
新たな火種
バラムガーデン
あの場所は、バラムが距離を置き始めた事に気が付いていない
ガルバディアとの諍いの種を大事に抱え込んでいる事に気が付いていない
世界の大多数は、“バラム”ガーデンを必要としていない
遠く無い将来にバラムもガーデンを必要としなくなるだろう
全てに決着をつけずに全ての責任を放棄した
まだ年若い子供達は、広く世界を見る事が出来ずにいる
「まぁ、関係ないんだけどな」
バラムガーデンを気に掛ける最大の理由は、もうすぐあの場所を離れる
知り合った子供達もそう遠くない未来にあの地から旅立つだろう
―――バラムガーデンの規則がそうなっている
「なる様になるだろう」
「だな」
今すぐの話ではない
まだ先の事
だが、きっとバラムガーデンは無くなるだろう
 
 

 End