擦れ違い


 
「これはどういう意味だ?」
画像の向こう側でスコールが一つの書面を指し示す
「んん?」
読み取った中身は別におかしな所は何もない
何のかは知らないが、ただの許可証だ
「………なんかしたか?」
内心首をひねりながらの問いかけに
画面上から書面が消える
「あんたの仕業じゃないってことか」
小さくスコールが呟くと、映像が突然切れた

「って訳だが、なんか心当たりがあるヤツはいるか?」
いつもの執務室
周りにいるいつもの顔ぶれ
昨日の夜入った、スコールからの不可解な連絡の件を問いかける
ラグナの言葉に幾人かが首を振り
幾人かが顔を見合わせる
彼等だけで幾つか言葉を交わし
「あると言えばあるような………」
ようやく、代表して一人が、困惑を浮かべながら言葉を告げる
「何があったのかな?」
絶対に楽しんでいるだろうキロスが話を促した事で語られた内容は、当たり前の申請書と当たり前の手続き
「………で?」
話が終わったといった風情の秘書官に思わず先を促したが
「それだけです」
あっさりとした一言
「それだけなのか?」
ガーデンの方から、申請書類が届いて内容に問題がないから許可を出した
要約すればそれだけの事
スコールの様子だとどうも納得出来ない事があるって感じだったんだが
「わざわざ連絡を寄越すようなことじゃないよな?」
ラグナの言葉に幾人かが同意する様に頷いている
「何かイレギュラーなことでも起きているではないかね?」
真面目に聞こえる声音を作り上げてキロスが言う
イレギュラーなぁ
まぁ、それ以外にわざわざスコールが連絡してくる様な事はないんだろうけど
「………例えば?」
「申請書を出したのはガーデンでは無かった」
キロスの言葉に、書類を処理したんだろう補佐官がゆっくりと首を左右に振る
「申請を出したという事が極秘にされていた」
「まぁ、ありそうではあるけどな」
けど許可が下りた時点で説明も行くんじゃないか?
「それはともかく、考えられるのは向こうとこちら側との認識が違うというところか」
「認識、なぁ」
それはあり得るかもしれないな
こっちとしては大した事は無い事でも立場が違えば価値は違ってくる
「けどこの場合の認識の違いってのはなんだ?」
ガーデンから出された申請書の内容は
エスタ北部の森林地帯でのモンスターの討伐訓練
「さて、その時になれば解るんじゃないか?」
他の奴等も納得してる事だし、いいよな?
「………まぁ、そうかもな」

申請されていた日当日
「………書いてあったか?」
エスタ国内へと姿を現したバラムガーデンの面々にラグナはため息を零す
「彼等の弁に依れば無いとのことだ」
「だろうな」
現れたのは学園丸ごととも言える様な人数
エスタ大陸まで上がって来れないガーデンそのものは置いてきたらしいが、入り口を知ってたら侵入してきたかもな
『さて、どうする?』
「どうするもなにもなぁ」
常識的に考えてお引き取り願うしかないよな
ラグナの視線にウォードが肩を竦めた
 
 

 End