火種2


 
ガルバディアは国内が混乱している
トラビアには戦力が足りていない
バラムには元から軍が存在していない
ドールは軍が無い上、ガルバディアとの戦闘によって受けた被害が大きい
様々な思惑の元に結ばれた停戦
不安定な平和
どこかの条件が変われば、均衡は崩れる
いつまで保つか、だろうな
ガルバディア国内は予想より早く安定してきているらしいが
あそこは、しばらく問題はない
エスタやバラムガーデンと当たった戦力のほとんどはガーデン生で、軍事的損害はそれほど高くは無い
だが、今はあそこは爆弾を抱えている
“魔女”の存在
魔女の力を目にし、魔女に操られた人達にとって
件の魔女とは別の人物だと言っても、印象が良いはずが無い
魔女の記憶が薄れていない今、下手な行動は出来ないだろう
“娘”のことは大切なようだしな
「引き続きバラムの動向に注意してくれ」
「はい」
今危険なのはバラムだ
街の方は一時的にガルバディアの手に落ちたが、実質的な被害は出ていない
唯一戦争の痛手を受けていない国
そして………
「………バラムガーデンはどういたしますか?」
未だ自分達が置かれた状況を察知していない所
ガーデンに対するバラムの感情―――不信感―――
何かが起きるのも時間の問題
「面倒事を持ち込まれんのも困るからなぁ」
個人レベルで親しみをもってくれるのは別に良い
けど、な
「気付かれないように見張っておいてくれ」
―――今までと同じ様に
「はい」

扉が閉じる
「着々と動いてる、か」
ため息が零れ落ちる
エスタだけでは無く、他の国々も予測していること
だが、当事者だけが未だ気付かずにいる
「泣きつかれても困るんだよな」
自分達の手に負えない事態になったから、と
ガーデンがバラムに存在できなくなったから、と
助けを求められても困る
エスタはガーデンを受け入れるつもりは無い
受け入れなければならない義理も無い
「少し考えれば気が付くはずなんだけれどな」
そういうまともな思考が出来る大人は全て排除されたのか
それとも聞く耳を持たないのか
脳裏に“学園長”の姿が浮かぶ
ただ夢を見て
ただ理想を思い描いた人物
ガーデンの教育は歪んでいた上に、綺麗事で全ての責任を放棄した
「所詮は世間を知らない子供だからな」
まだ10代の若者が裏側にまで気が付くはずがない
「もう少し長ければ良かったんだけどな」
報告されたバラムの動きは予想よりも速い
知り合いが居なくなった後に動いてくれれば面倒もなかったんだけどな
見知った子供達の姿が思い浮かぶ
エスタへと伸ばすだろう手
エスタはその手を取ることは絶対に無い
その次の行き先は?
「厄介だな」
呟いた言葉が重く響いた
 
 

 End