火種3


 
「SeeDってのはさ、バラムガーデンに所属しているもんなんだよな?」
なにげない会話の中
近状から、ガーデンの話へ
そしてSeeDの話へと会話を移行する
少し不自然かもしれない話運びに、スコールは疑問を感じてはいない様に見える
「そうだ」
簡潔なスコールの言葉は何処か誇らしげに聞こえる
「ならさ、ガーデンを卒業した後のSeeDの扱いってのはどうなってんだ?」
SeeDはバラムガーデンの学生でなければならない
何を思ってそんなルールを決めたのかは知らないが、聞き知っているのはそんな話
普通に考えれば、ガーデンを離れればSeeDでは無くなり、ガーデンとの繋がりは消える
そう思って正解なんだろうが
常識が少しばかりねじ曲がったバラムガーデンの事だ。何かおかしな抜け道が在っても困る
「基本的にSeeDはガーデンに所属している間しかSeeDとして存在出来ない」
基本的に、な
「ってことは、なんか例外があるってことか?」
SeeDはガーデンの切り札だ、期間が来たからと言って簡単に手放すものじゃないよな
それに、長い間ガーデンに所属していてもSeeDになれるのは卒業の僅か1〜3年前
そんな短い期間で優秀な人材を手放すなんて効率の悪い事をする筈がない
「………ガーデンの情報だ」
何かを言いかけたスコールが、何かを思い出した様に口を噤んだ
「ああ、そういや、SeeDはガーデンの秘密兵器みたいなもんだもんな」
ラグナは今の会話に深い意味は何も無かったのだと、そう受け取って貰える様に
わざとのんびりとした声を出す
スコールの表情が微かに動く
何処か呆れたような、幾度も見た表情
きっと疑いは抱いていない
さて、問題はここからなんだけどな
ラグナは僅かな時間を作る為に、コーヒーを飲みこむ
どう話を持って行くか
………いや、ストレートに聞いてしまうのもありか?
考えた時間はほんの僅か
「なぁ、スコール」
軽く声のトーンを整える
言葉に深い意味はない
けれど、感情は感じられる様に
「スコールはSeeDを辞めるのか?」
ラグナの言葉にスコールの視線が微かに揺れた

あの後、話題を変え、当たり障りの無い会話をした
詳しいことは解らなかったが、バラムガーデンはSeeDとそれなりの関係を続けている事は解った
だが、SeeDとバラムガーデンの関係なんてものはどうでも良い
問題なのはバラムガーデンとスコールの繋がり
何処までスコールがバラムに縛られるのか、だ
縁が綺麗に切れるのなら良い
バラムガーデンに残る友人達と微かな繋がりが在る程度なら、ある程度の抑止は出来る
だが、直接バラムと繋がりがある
SeeDとしてバラムと関わっているとなれば話が違ってくる
こちらでどれだけ抑止しようと意味が無い
所属先がバラムガーデンだというのなら、当然それに対する義務が生まれる
明確な答えを返さなかったスコールの姿が思い浮かぶ
「どうやって引っ張り込むか、だな」
スコールはガーデンを離れる事を選んでいる
バラムガーデンのSeeDであること
それに対する拘りは大分薄れてきている
「どうにかするしかないな」
とりあえずバラムの動向に気をくばっておくか
打つべき手を考えながらラグナは部屋を後にした
 
 

 End