火種5


 
「シド学園長ってのは、何をするんだ?」
学園の運営が引き渡される
そんな話を聞いて、話の流れから聞いた言葉
ラグナの言葉に子供達は顔を見合わせ
「さぁ?」
不思議そうに首を傾げた

「そういや、シドの旦那はどうしてるんだ?」
まったりとしたお茶の時間
ソファーに深く身体を預け、ぼんやりと窓の外を見ていたラグナが不意に問いかける
「シド?」
元学園長を思い出すような話をした覚えもない
なぜそんな事を聞くんだ?
スコールは訝しげにラグナへと視線を向ける
「なんか思い出しただけなんだけどな」
ラグナの様子には特に話を聞こうとする態度は見られない
むしろどうでも良さそうだ
沈黙に耐えられなくなっただけか
何か話題を探すにしても、もう少しまともなものは無かったのか?
スコールは内心で文句を言いながらシドの事を思い出す
学園長が何をしているか、か
「何かをしているという話は聞かないな」
何かをしていると言う話以前に、噂話にも上ってはいない、と思う
セルフィ辺りなら、何か知っていたりするかもしれないが、少なくとも俺の耳には入っていない
「のんびり引退生活を楽しんでるんだろーなぁ」
投げやりに聞こえたラグナの声に、微かな感情が滲む
「いいよなぁ」
しみじみと呟かれた言葉に、スコールは納得する
いつもの軽口だな
大統領を辞めたい
引退してのんびり過ごしたい
ラグナが良く口にしている言葉
いつもの様に、大統領から逃れる事でも考えていたんだろう
「クレイマー夫妻は、バラムガーデンを出て、セントラにでも移ったのか?」
「知る限りではガーデンに居るはずだ………」
ラグナと言葉を交わしながら、しばらくガーデンに戻っていない事に気が付いた

シド・クレイマーはイデア・クレイマーと共にバラムガーデン内で暮らしている
それらは既に情報として入手していたもの
シドは学園長―――バラムガーデン責任者としての地位を明け渡しながら、依然としてバラムガーデン内に留まっている
先の戦争の元凶として考えられる“魔女”と共に
ガーデンとの関係は繋がったまま
その上、魔女と関わりが在ると宣伝している
「何かあるかとも思ったんだけどな」
シドではないとしても、何らかの意図が働いているかと考えたんだが
「まぁ、スコールだしな」
噂話には疎い
っていうよりは、興味が無いんだろう
自分が属するところに興味が無いってのは問題だが
「逆に良かったよな」
ガーデンに対する興味が薄れている
なら、多少ガーデンにとって不利な状況となっても動かないんじゃないか?
上手く行けば、だな
本人が情報を集めなくとも、向こうから情報がやってくるってのはどうしようもない
「どっちにしろ様子見をするしかないんだけどな」
バラムガーデンの動向
それと
クレイマー夫妻の動向も注意しておくべきだろうな

何処が何を考えて何をしようとしているのか
それを知らなければ話にならない
情報はちゃんと集めるもの、だぜ
 
 

 End