火種8


 
表面的な変化はまだ見られない
知っていなければ
調べなければ気が付かない事実
バラム国民の大半もまだ気が付いてはいない
知っているのは話を持ちかけられた者達と
関わりのある一部
話が漏れ広がらない所を見ると
よほど統制がとれているのか、意見が一致しているのか
バラムガーデンと元ガーデン生との接触も見あたらない
ガーデン生へとなんらかの情報を漏らす様子も見られない
「話があっても良いはずなんだがな」
バラムガーデンに通う者達はバラム国出身者が多い
“家族”が居る者もそれなりに所属している筈
何らかの話があっても可笑しくは無い
「思ったよりも悪そうだな」
“バラムガーデン”という組織に対する認識は思っていた以上に良くないのかもしれない

ガーデンに対する依頼の数が減っている
それは仕方のないこと
今はガルバディアの侵略は終わり
国毎の争いが存在しない
各国もこの間の争いのおかげで大きな被害を受けている
各国の国内での争いもそれほど大きなものはなくガーデンに対する依頼の規模はどうしても小さく成る
「困ったわ」
ガーデンを運営するに当たってお金は必ず必要になる
その資金が足りない
「ガーデン」だけならどうにかなるけれど
問題となるのは所属する人達への給料
とりわけSeeDに対する支払い額が大きい
「負担が大きいわ」
SeeDの数は多くても少なくてもいけない
その言葉の真理はここにあったのかしら?
ふと浮かんだ馬鹿な考えを頭を振って追い出す
「でも早急にどうにかしないといけないことだわ」
お金が払えなければSeeDという存在の維持が難しくなる
SeeDがいなければガーデンの存在意義が無くなる
「いろいろ見直さなければダメね」
キスティスの言葉は小さく響いた

「バラムガーデンに動きがあったようですね」
秘書官の言葉に目を向ける
まだ動きとは言えない様な小さな動き
ようやく外へと向けられた視線
「各国の動きを知る、だそうだ」
それがバラムガーデンが掲げた目的
「気付くかな」
各国の状況にバラムは含まれているのか解らないがさすがに、な
「気付いたからといってどうする事もできないだろうがね」
バラムがガーデンに何かをする事は無いだろう
―――する必要が無い
「ま、こっちに飛び火しなけりゃどうでもいいけどな」
ラグナの言葉を最後に日常の業務へと戻った
 

 End